第13章 十四松の誓い
「ちなみに誰?チョロ松くん?」
と、涼しい顔で、トト子。「この間変に庇ってたし」と付け加える。
「だから!一緒にいると楽しいってだけで、そういうのとは違うから!」
「あ、分かったトド松くんでしょ?昨日ゆめ美と三人でデートしよって誘ってきたもーん!断ったけど」
「断ったんだ……じゃなくて!違うから!」
「え?トド松くんじゃないのー?じゃあおそ松くん?あいつ調子いいもんねー」
ぷぷーっと口に手を添えて吹き出す親友に、ゆめ美は赤面になりながら否定する。
「だから、好きとかはよく分からないから…」
「ちょっとー、なんでトト子に隠すのー?あいつらがトト子の信者だからー?」
むくれ顔のトト子に、今度はぶっきらぼうに返す。
「うんうん、そうです。信者だから」
「あっ、カラ松くんと一松くんだ」
「えっ?どこ?」
「はい嘘ー!その反応、この二人のどっちかでしょー!!」
どうやら、目を覚ませと言っておきながら、ゆめ美の気持ちを知りたくてしょうがないらしい。
「ち、違うって!」
「あははははっ!今目が泳いでたー!実はうやむやにしておきながら、本命はじゅうし」
トト子がその名を言いかけた時——
「ブウゥゥゥゥウーーーーンッッ!!!!」
「っ!?」
窓際のカウンターに座る二人の目の前——ガラス越しに、野球のユニフォームを着た十四松が、地鳴りのような声を上げて走り去って行った。
「…十四松くんは…ありえない、か」
そう呟き、ゆめ美の顔に視線を向けたトト子だったが、
「ふふっ、十四松くんていつも面白いよね!」
「……」
楽しそうにくしゃりと顔を緩ませる親友の笑顔を見ると、それ以上何も言えなくなるのだった。