第12章 恋とニャンコと真心と
それから——
十四松にだっこされて、ぼくは一松の元へ向かった。
一松も十四松も、ちゃんと謝ってちゃんと仲直りして一安心。
ぼくも一松にだっこしてもらえて一安心。
一松はぼくを嫌いにならないでいてくれたみたい。
一方、ぼくのエスパー能力はというと、翌朝になったら無くなっていた。昨日は大変だったけれど、今日からまたいつものノンビリライフを満喫出来る。
お気に入りの寝床からくわっと背筋を伸ばし飛び降りると、
「……ほら…猫缶」
一松がごはんを用意して待ってくれていた。
「ニャーー!」
ぼくは一松に飛びついた。
一松の腕の中、ぎゅって包まれる。
やっぱりぼくは、一松のだっこがいちばん好き!
「おれさ、思ったんだ…。もし……ゆめ美にお前を会わせたら、あいつの気持ちが分かるかなって」
あれ?昨日のゆめ美ちゃんとおんなじこと言ってる。
「べ、べつに、あいつがおれのことどう思ってるかとか興味ないけど、でも、実験つーか、気持ち薬の持続時間がどれくらいか知りたいだけで…」
「ニャー」
ごめん、ぼくもう気持ちが分からないし話せないんだ。
「いや、やっぱやめる。人の本音なんか、知ったっていいことないし」
うーん、一松は相変わらずネガティブ思考。
「もし…頼むから死んでくださいウジ虫とか思われてたら……」
一松はそこまで言うと、しゅんとしてため息をこぼした。心配で見つめていると頭をわしゃわしゃしてくれた。
「……お前の言った通りだよ。怖いだけ。おれバカだ。こんなおれがあいつを好きとかさ。おれみたいなゴミが女に惚れるとかギャグでしょ…?分をわきまえろって思うでしょ?」
暗く光のない瞳がぼくを見ている。
またそうやって自分で自分を傷つける。
本当はさびしくてたまらないんでしょ?
ぼく、気持ち薬が無くても、一松のことなら分かるよ。
バカじゃない。一松はいいヤツだよ。
みんなよりちょっとこわがりなだけ。