第12章 恋とニャンコと真心と
「あーーっ!!みつけたーっ!!」
突然、ゆめ美ちゃんの背中越しに、十四松の大声が響き渡った。
「十四松くん?どうしたのそんなにボロボロになって!?」
「エスパーニャンコ探してた!」
「エスパーニャンコ…ってもしかしてこの子?十四松くんもこの子が話せるの知ってたんだ?」
「うん!」
十四松は頷くと、ゆめ美ちゃんにぼくがエスパーニャンコになった経緯を説明した。十四松の説明はところどころ素っ頓狂で、話がどっか飛んで行っては戻っての繰り返しだったけど、ゆめ美ちゃんは驚いたり笑ったり、ちょっぴりしょんぼりしながらも、最後まで真剣に聞いていた。
「——そっか。それでメガネくん、人間の言葉が話せるようになったんだ」
「ぼくさ、一松兄さんに謝ってくる。だからエスパーニャンコ連れてっていいかな?」
「もちろん。きっと心配してるだろうから、早く行ってあげて」
ぼくを掴むゆめ美ちゃんの腕が伸びると、十四松がだぼだぼな袖でぼくを受け止めた。
——その時、
『ありがとう。ゆめ美ちゃんだーいすき!』
十四松の本音が、ぼくの口からポロリとこぼれ落ちた。
「だ、大好きって……今のは……?」
オロオロするゆめ美ちゃんに対し、十四松は頭を掻いてはにかんでいる。
「ぼく急がなきゃ!ゆめ美ちゃん、ありが特大サヨナラホームラン!!」
「ニャー」
「ぁ…うんっ!またね!」
夕焼けよりまっかになったゆめ美ちゃんに、ぼくと十四松はさよならして、一松の元へ向かった。
・・・
そんな十四松の背中を追いかける影が一つ。
「う…ぐ」
松葉杖をついたカラ松が、目に涙を浮かべながら歩いていた。
「オレの…扱い…」
カラ松がバランスを崩しよろけた時、
「カラ松くん!?」
すぐそばにいたゆめ美が駆け寄り、抱き止めた。
「あぁ、ゆめ美…キミっていうカラ松ガールは…!」
「?」
カラ松にとって、この僅かな時間が唯一の救いだった。