第12章 恋とニャンコと真心と
「凄いね!メガネくん頭いいっ!」
『メガネくんあたまいい。一松くんにも教えてあげないと。でもなかよしだからもう知ってるかな?』
「えっ?」
驚かせて申し訳ないけれど、生憎ぼくの声は止まらない。
『もしかしたら、一松くんがこの子にことばを教えたとか?さすがにそれはないかぁ』
「えっ?えぇっ!?なんで私の気持ちが分かるの?」
『なんでわたしのきもちがわかるの?』
ゆめ美ちゃんはぼくをだっこすると、怪訝そうにぼくの目を覗き込んできた。しばらく考え込むように黙っていたけれど、恐る恐る口を開く。
「……もしかしてメガネくん、人の心が読めるの?」
「ニャー!」
鳴いてお返事したら、ゆめ美ちゃんは目をまん丸にしながら満面の笑みになった。
「あはははっ!信じらんない!サイキックニャンコだ!」
なんか、みんなと違うあだ名をつけられた。
「じゃあさ、試しに無口な一松くんがどんな人か教えてくれる?」
『わたし、もっと一松くんをしりたいんだ』
「あのさ…恥ずかしいんだけど。私じゃなくて一松くんの気持ちだってば………って思ったけど、やっぱりいいや」
『やっぱりいいや。なんかずるいから』
ぼくの言葉を聞くと、ゆめ美ちゃんは困ったように笑う。
「そう。メガネくんに聞くのはずるいからさ、自分で頑張って仲良くなって自分で知るよ。一松くんてさ、人を避けるような所あるけれど、勿体無いよね。いい人なのに」
あれ?一松のこと分かってるの?
ぼくもね、そう思うよ。
一松はとっても優しくていいともだちだよ!
「あはは…人のこと言えないか。私も消極的だし」
『でも、あのぶきようそうなところがまたかわいいんだよね』
「だから!恥ずかしいからもうやめて!」
あれ、主ちゃんまっかっか。
そこでぼくは気がついた。
もしかしたら、大切なことは言葉にしなくても伝わるのかもしれない。
だって、主ちゃんにはちゃんと伝わってる。
一松がいい奴だって。
(一松、もしかしたらこれは脈アリかもしれないよ)
今のぼくには全部分かる。
ゆめ美ちゃんはね、一松のことを考えると、心がね——…