第11章 恋煩いライジング
・・・
「ったく、あいつら何考えてんだ!」
黄昏色に染まる商店街に、ゆめ美とチョロ松の姿があった。
ゆめ美の手には、買い出しで頼まれていたほうれん草。
「あはは…ドッキリ企画みたいで面白かったよ」
「僕とゆめ美ちゃんが二人きりでいるのが気にくわないからって、なりすましとかありえないから!しかも低クオリティ!!」
兄弟の悪ふざけにチョロ松はたいそうご立腹である。不服そうにへの字口を硬く結び、ボロボロになったネクタイを締め直す。
そんなチョロ松に、ゆめ美はなんとか機嫌を直して欲しくて笑顔で話しかけた。
「でも、今回ので分かったよ」
「あいつらのバカさ加減を?」
「ううん」
首を振って、ゆめ美は小さく微笑む。
「チョロ松くんは、みんなの纏め役なんだなって。あの五人はさ、チョロ松くんのツッコミが無いと、暴走しっぱなしだと思う。大変な役回りを引き受けて、えらいえらい」
「うう…っ!ゆめ美ちゃんは分かってくれるの?僕の苦労を…!!」
「うんうん。わかるわかる」
ゆめ美は立ち止まり、涙目になったチョロ松へ向き直る。
「もうお店着いちゃったから、最後に…」
そう言いながら背伸びをすると、ぽんぽんと小さな手でチョロ松の頭を撫でた。
「へ…?」
チョロ松の瞳孔が開き、目が点になる。
嬉しさが許容量を超えてチョロ松に襲いかかり、彼の脳内はドキドキパラダイスでしゃかりきコロンブスだ。