第11章 恋煩いライジング
「あははっ、驚かせてごめん。こういうのは私のキャラじゃないけどさ、そのスーツ見たら気の毒すぎてほっとけなくて…」
ゆめ美は後ろ手でチョロ松を見つめた。
二人の瞳は、燃える赤に照らされながら互いを映し出している。
どちらの頬も赤らんで見えるのは夕陽のせいだろうか。
「チョロ松くん、これからもしっかり者のお兄ちゃん、頼れる弟として、みんなのことをよろしくね」
「ゆめ美ちゃん…」
「はい、約束」
小指をゆびきりするよう差し出すゆめ美。
チョロ松も恐る恐る小指を出すと、ゆめ美から引っかけた。
細い小指が手汗ハンパないチョロ松の小指と絡まり合う。
「今日はありがとう!楽しかった!またね」
「うん、また…ね!」
ゆめ美はパッと小指を離すと、恥ずかしさを押し隠すように足早に店内へ入って行った。
(行っちゃった…)
ぽつん、と人混みの中取り残され、小指の余韻に浸るチョロ松。
小指を眺めれば、顔がほころび、胸の中にあたたかな感情が芽生える。
(僕、今日ゆめ美ちゃんと、間接チューして頭ナデナデされて終いにはゆ、ゆびきり…しちゃったぁーー!!)
兄弟の中で一番近い存在になれたんじゃないだろうか——と、前向きな予感を抱き、拳を固く握り締め、
(ゆめ美ちゃあぁぁあんっ!!超絶かわいーーーフツーに好きぃーーーーッ!!!!)
心の中で、夕陽に吠えるチョロシコスキーなのだった。
こうして、この日からチョロ松のツッコミは息を吹き返し、更にキレッキレになったという。
12章へつづく