第11章 恋煩いライジング
ゆめ美は嬉しそうでもあり、照れくさそうでもある、複雑な表情をしながら言葉を紡いだ。
「あの日は、偶然会って看病してくれたんだよ。だから、たぶんチョロ松くんが考えてるような仲ではないけれど…。でもね、カラ松くんてね、なんか不思議なんだ」
そう言うと、紅茶を飲んでふぅとひと息。
「カラ松くんといると、なんだか懐かしいような…変な感覚になるんだよね」
(変な感覚!?変な感覚って何!?)
気になるところで、またゆめ美は紅茶を口にする。
焦らされてチョロ松は心中穏やかじゃない。
「ねぇ、それって、もしかして…」
「例えると、昔からの知り合いというか、小学生に戻っちゃう感じ、かなぁ」
「……」
想定外な返答に、チョロ松は言葉を返せなかった。
"胸が苦しくなる"とか"顔がひとりでにニヤける"とか言われたら死ねると思っていた。
(童心に帰るってヤツか。つまり、気楽に話せるだけで眼中にないってこと…なのか?)
ホッと胸をなでおろす。
「そっか。じゃあ別に、付き合ってるから家に呼んだとかじゃないんだね?」
「つ、付き合ってないよ!本当に看病してくれただけだって!」
「ハハッ、そうなんだ!ちょっと僕、トイレ行ってくるね」
「え?う、うん、行ってらっしゃい」
安堵した途端、チョロ松は尿意に襲われ席を立つ。
(てことは兄弟の誰よりも、こうしてお茶してる僕が一番仲良しかも!グフ…グフフフフ…)
お気楽な三男は、鼻の下を伸ばしながらトイレへと向かった。