第11章 恋煩いライジング
その翌日も、兄弟で詰問したが、カラ松は何もなかったの一点張りだった。
うやむやにしておきたいのはあったが、「いい歳した男と女が密室で二人きりとか、エロい展開しか思い浮かばない」というおそ松の台詞がチョロ松の溜め息を製造していた。
チョロ松が一人ベランダでお月様を仰ぎながら、二人で歩いた夜道を思い出し感傷に浸っていたのは、何を隠そう、次男が原因だったのである。
(きっと大丈夫だ。あいつは自分に酔いまくってるくせに、ナンパじゃなく逆ナン待ちするようなクズ。手を出す筈はない…!でもここは念の為、勇気を出して確認しよう…!)
べつに自分を好きかどうか聞く訳じゃなし、リスクは少ない——と、チョロ松は自分に言い訳しつつ、自ら一歩踏み込んだ。
「あ、あのさ…」
「なぁに?」
「カラ松兄さんと…いつからそういう仲なの?」
それはチョロ松の賭けだった。
何かあったのか聞けば、濁される可能性がある。ならば、ハッタリをかまし知っているフリをしようと踏んだのだ。
「え…?」
「カラ松兄さん、家に上げたんでしょ?」
そう言って、今更ながら自分の気持ちに気づく。
(僕、なんで、こんな——)
湧き上がる不安と嫉妬心。アイスコーヒーをゴクリと飲み込み、ゆめ美の言葉を待つ。