第11章 恋煩いライジング
「さ、私はフライの仕込みでも——」
と、キッチンへ足を向けた矢先、
「抜けシコスキーーーッ!!!!」
「ん?」
怒鳴り声と共に勢いよくドアが開いた。
店主が驚き振り返ると、店の入り口に見知った顔が五つ並んでいる。余程急いで来たのか、全員肩で息をしている。
赤いつなぎの袖部分を腰で結んだおそ松が、シャツで汗を拭いながら口を開いた。
「ゼェ…ゼェ…おっさん、ここに、トト子ちゃんとゆめ美ちゃんをはべらしたシコ松がいるって、聞いたんだけど…」
「あぁ、トト子ちゃんなら帰ったよ」
十四松は置いてあったグラスの水を飲み干すと、ぶんぶんと店内を見回し「あっれー」と叫んだ。
「チョロ松にーさんとゆめ美ちゃんもいないねー!」
「うん。二人で…」
ここで店主はワザとためてニコッと微笑む。
「休憩がてらデートしに行ったからね」
(な、なぁにぃぃぃいい!!??)
五人一同その場で狼狽する。
おそ松は天井をふり仰ぐようにすると、頭を手で押さえ声をあげた。
「休憩って…まさかラブホかラブホなのか!?あいつ、俺達には『働かざる者ヤルべからず』ってほざいてたくせに!!」
ちなみにチョロ松はそんなこと一言も言ってない。
「休憩二時間で部屋を取ったというのか。殺そう」
「ただ殺るだけじゃつまんない…。まずはチンコをフランクフルトに……」
そう言って一松は、ポケットに忍ばせていたオイルライターの火をつけ不気味に微笑んだ。火あぶりにする気だ。