第11章 恋煩いライジング
おそ松が、重苦しい空気の中口を開く。
「…大富豪で勝って、ゆめ美ちゃんを家まで送ったのってあいつだよな?」
カラ松は動揺し、手鏡の持ち手をパキリと握り潰し、唸るように声を出す。
「ま、まさかチョロ松…あの夜ゆめ美と…!」
その横でトド松は、あの日ゆめ美に送ったラインを読み返し、ホッと安堵の表情を浮かべた。
ゆめ美とのやりとりを読めば、チョロ松が手を出してないのは明白だった。
「いや、それはないありえない。あの日はちゃんと、寄り道させないようにボクが牽制しておいたし。つか、あの童貞拗らせ兄さんに限ってそんな勇気ないでしょー」
「でもさ、あの日帰ってきてからずっとタッティだったよね!あと今アカツカ亭にいるらしいよー」
十四松が澄んだ瞳でそう言った瞬間、四人は顔を見合わせた。
「…なんか俺すっげぇ気になってきた!可能性の芽は潰すに限るよな〜!」
「そういえば確か、トト子ちゃんとアイドル活動の打ち合わせと言っていたな…」
「何それ!?カラ松兄さんそーゆーの早く教えてよ!ダブルヒロイン独り占めとか絶対阻止しないと!」
五人が立ち上がり、勢いよく襖が開かれる。
「あいつ、シコ松の癖に踏み込んじゃいけねー領域に入ったな。ゆめ美ちゃんとセックスすんのは、話の流れ的に長男の俺だろ!」
「ゆめ美と真っ先にヤるのはオレだ!」
「おれは…とりあえず見るだけで…」
「一番にヤるのはぼくだよ!」
「いやいやいや、消去法でいくと、可能性あるのは兄さん達じゃなくボクだから」
いつの間にか、脱童貞合戦になっている。
「よーしお前ら!暇つぶしに、甘い蜜を吸う三男を邪魔しに行くぞ!!」
おそ松の掛け声を合図に、ワーーーーッ!!っと雄叫びを上げながら五人は家を飛び出した。
・・・