第11章 恋煩いライジング
「なーに?一松にーさーーん」
カラーコーンを頭に被って遊んでいた十四松が小首を傾げる。
「最近…チョロ松兄さん変じゃない?」
「前から変だろ。シコ松だし」
「ライジングだしね」
茶化すおそ松とトド松を横目に、カラ松は真剣な表情で頷いた。
「確かに変だな。求人誌を読む回数が増えた」
それに十四松も続く。
「たしかにたしかにっ!!夜寝る前、ベランダで月ガン見してるよねー!」
「あぁ、そういえば月見ながら溜息ついてる。あれはヤバい」
と、おそ松は腕を組んでうんうんと頷く。
「何それきもちわるっ」
「でしょ…おかしいよね」
一松は意見が一致し、満足げにニヤリと口の端を上げた。
実際、最近のチョロ松は絶不調だった。
大好きなにゃーちゃんのライブでも、オタク仲間にチョロさん最近腕落ちた、声出てないしサイリウムのキレが悪くなった、にゃーちゃん愛が足りてないと噂される始末。
それだけじゃない。
兄弟の中でツッコミ役を担うことが多い彼だが、それすらもサボり気味だ。兄弟のダメ人間ぶりを目の当たりにしても、面倒臭そうに部屋から立ち去るのみ。
このままでは、暴走するニート達のストッパーがいなくなってしまう。
「一松よ、いつから変化を感じた?」
「……トランプした日から」
その一言に、四人は固まり息を呑んだ。