第11章 恋煩いライジング
場所は変わり松野家の居間。
いるのはチョロ松以外の五人。
ある者は漫画を読み、ある者は鏡に映る自身に酔いしれ、ある者はスマホを弄り……要するに暇を持て余していた。
おそ松は漫画に目を通しながらトド松にちょっかいを出す。
「なぁトド松」
「んーー?」
「さっきから誰と連絡取ってんの?女の子?」
「違うよ。フリマアプリ」
「でたぁ今時の若者ー」
毒にも薬にもならないだらけた会話が淡々と続く。寂しがり屋な長男は、お次は次男をロックオン。
「カラ松ぅ〜顔ばっか見て飽きないのー?」
「フッ、笑わせるな。マイフェイスに飽きるわけがないじゃないか」
「あっそ。じゃあチョロ松ー。ってあれ?チョロ松は?」
寝そべっていた身体を起こし、おそ松はキョロキョロと部屋を見回した。
スマホに視線を向けたままトド松が答える。
「チョロ松兄さんはスーツで出かけたよ」
「んだよそれ?就活?お兄ちゃんに何も告げずにさ」
「知らなーい。社会人のコスプレじゃなーい?あ、このニット帽かわいー」
「えーそれ持ってんのと何が違うの?」
話がすぐにチョロ松から逸れて行くのは、彼らがさほどチョロ松に関心が薄いからかもしれない。
「これはちゃんとしたブランドなの」
「うわこの子、ブランドとか…やだねぇ見え張っちゃって」
「見栄じゃなくてハイセンスなだけだから」
クソ面倒臭いな、パチンコでも行ってスってこいよと末っ子が胸の内でボヤいていると、
「あの…ちょっといい?」
猫と戯れていた一松が、控えめに挙手をした。