第10章 恋熱にほだされて
・・・
(なんてスウィートなんだ…)
もうどれくらい経ったのだろう。
寝息を立てるゆめ美のすぐそばでカラ松は、クソ熱い眼差しを注いでいる。どんな眼差しかというと、目をキラッキラさせたあのクソ顔をご想像いただきたい。
——と、ゆめ美が寝返りを打ち、腕がだらりと布団からはみ出した。
冷えてはいけないと手を布団に戻そうと掴みかけるも、一瞬躊躇う。
無防備なゆめ美に触れるなど、男としてどうなのだろう、と。
しかしその時、ゆめ美は眠りながら声を漏らした。
「…ん……んぅ」
熱にうなされているのか、寝苦しそうだ。
「ゆめ美…」
たまらなく心配になったカラ松は、そっとゆめ美の手を包み込んだ。
安心したのか、寝顔が穏やかになる、
(こんな時にアレだが…本当にかわいい…な)
まるで自身も熱病にかかったかのように、カラ松の頬は熱を帯びていく。繋がった手の温もりはどこか懐かしさを感じた。
「なぜ忘れていたんだろうな。記憶が正しければ、オレとゆめ美は——」
「…く、ん」
「ん?」
自分を呼んでいるのかと思い返事をしたが…
「おそま…つ、くん…」
「っ!!」
ゆめ美は辛そうに眉根を寄せ、おそ松の名を口にした。
ズキリ、と胸が嫉妬に蝕まれる。
(ゆめ美、キミはもしかしておそ松を…)
「もう…あのお店は…い、や……」
「……」
(一体どんな悪夢を見させてんだおそまーーーつっ!!??)
汗ばむ顔をタオルで拭ってやり、手を握る力を強めると、ゆめ美は安心したように再び整った呼吸で眠り始めた。