第10章 恋熱にほだされて
「ゆめ美ちゃんは開発段階でテスターになってくれた子ダスから、永久無料提供してるんダス!金銭面も安心して欲しいダス!」
「そうなのか…。だが、ゆめ美。飲み続けて身体に変化とかは無かったのか?」
キョトンとしながら首を横に振るゆめ美。
「そうか…」
それならば信じようと、カラ松はそれ以上問いただすのをやめた。
もし本当に、博士の力で病弱だったゆめ美が毎日働けるまで健康になったのならば、松汁の力は本物なのかもしれない。
「でもこの様子だと、風邪薬も飲んだ方がいいダスな。ワスは医者じゃないダスから風邪薬は処方できないダス。ほい、とりあえず松汁ダス」
博士は、異空間へと繋がっているのであろうデカパンに手を突っ込み、粉末が入った瓶を取り出した。案の定、瓶は異臭を放っている…。
「デカパン博士。いつもありがとうございます」
「くさーーっ!?ゆめ美!そんなの触ってはダメだ!!」
「え?なんで?」
「なんで!?逆になぜ聞く!?」
「変なカラま…キャッ!」
ゆめ美は松汁を受け取ろうと、椅子から身を乗り出すがまたよろけてしまった。
カラ松は直ぐに肩を支える——が、不安は膨らむばかり。
代わりに松汁を受け取り、ゆめ美の肩を両手で掴むと、真っ直ぐな瞳を向けた。
「ゆめ美、その様子では一人にさせられない。看病させてくれ」
「平気だよ。松汁があればもう大丈夫だから」
「大丈夫そうに見えないから言ってるんだ」
「でも、これ以上…」
「迷惑かけられない」とゆめ美が言おうとしたところで遮られる。
「迷惑かけるなんて言ってはダメだからな?」
言い当てられ、ゆめ美は困ったように伏し目がちになった。
「…本当にいいの?」
「フッ、もちろんだ!」
「ありがとう。じゃあ…お願いします」
「お前ら何いちゃついてるんダヨン。用が済んだらさっさと帰るんダヨン」
「い、いちゃついてません!」
助手のダヨーンにからかわれ、ゆめ美の熱で赤らんだ頬が更に紅に染まる。
そんな賑やかな様子にデカパン博士は苦笑し、「ちゃんと安静にするダスよ」と告げて背中を見送った。