第10章 恋熱にほだされて
意気揚々と歩き始めたところで、
「ゆめ美!?」
「あ、カラ松…くん」
幸運にもカラ松は、早速お目当のデスティニーに遭遇した。
喜んだのもつかの間、足元がおぼつかないゆめ美の様子を見て、慌てて肩を支える。
気怠げな瞳、紅潮した頬に、まさかと思い額に手を当てた。
「…ひどい熱だ…病院へ行こう」
「デカパン…博士…」
「え?」
「博士に…会いたい…」
カラ松はなぜゆめ美がデカパン博士を知っているのだろうと考えたが、思えばゆめ美は小三までこの街にいた。知っていたって何の不思議も無い。
力なくカラ松の胸に、身体を預けるゆめ美。
躊躇している時間はなさそうだ。
「本当に、病院ではなくデカパンラボでいいんだな?」
念の為に確認すると、ゆめ美は虚ろな目でカラ松を見つめ、微かに頷いた。
カッコつけているだけで、女子に免疫のない彼の心拍数はメーターを振り切っていたが、こんな時にタッティしている場合じゃない。
「分かった。必ずデカパン博士の元まで送り届ける。さあ、乗るんだ」
「え!?…で、でも」
「いいから」
戸惑うゆめ美に優しく微笑みかけ、カラ松はゆめ美をおぶさった。
「ご、ごめんね…」
「ノンノンノン、こういう時は謝ってはダメだ」
「…ありがとう」
「あぁ。さぁ行こう」
カラ松が歩き始めると、ゆめ美はきゅっと肩を掴んだ。
(これが…人の温もり…か)
背中にゆめ美の体温とおっぱいを感じ、早くラボへとはやる気持ちと、ずっとこうしていたいという身勝手な願望がせめぎ合う。
だが、熱にうなされ苦しんでいるゆめ美の呼吸が耳元から聞こえると…
(オレは…何バカなことを…)
気持ちを切り替えラボへと急ぐカラ松だった。
・・・