第3章 再会!帰郷のリンクメイト!
立ち去った勇利の背中を眺めて、ヴィクトル・ニキフォロフは動かないままだった。
勇利のコーチがあわてて後を追いかけるのを見送って、それからやっと、自分のコーチとの会話が途中だったことを思い出して向き直った。
「トール、今の」
「ヴィクトル、なんであんなこと言ったの」
雷のような徹の視線が、ヴィクトルをとらえる。
ヴィクトルには徹が怒っているのはよくよく分かったが、どうして怒っているかが読めず、首を傾げた。
うん、これはかなり怒ってるな。
体の不調を告げずにフリーを滑った時と同じくらいには怒っている。
ヴィクトルは他人事のように分析した。
「なんで?俺は記念写真がとりたいのかな、って思って声をかけただけだよ?」
「彼、誰だかちゃんと見てた?」
「見てたよ。日本のユーリだろう?彼のスケーティングはなんというか……初めてのグランプリファイナルで緊張しちゃったのかな?見ていられなかったよね」
「っ………!!」
徹が煮えたぎった目をヴィクトルに向け、彼の胸元を掴んだ。
怒りでふるふると震える徹の手に、ヴィクトルは己の手を重ねる。
「どうして怒る?」
「勇利は、ほんとはあんなんじゃないんだ」
「……そう。でも僕らにとって、氷上が全てだ。彼の本当の姿があれではなかったとしても、氷上で実現できなければそれはないのと同じだよ。トール。君だってそれはよく知ってるはずだ」
ヴィクトルは怒りを怒りで返してしまわぬよう、努めて冷静に返す。
返しながら、苛立ちのようなものがヴィクトルの中に広がっていく。
ユーリ・カツキは実力のある選手だ。
それは分かる。
グランプリファイナルで最下位という結果になったとしても、出場できるだけの力はあるのだから。
だが、彼の滑走はショートもフリーも散々なもので、見ているこっちが心苦しくなるほどだった。
それを、何故トールはかばう?
「っ……そんなの、解ってる、解ってるんだ…………」
か細い声で徹が言った。
「ごめん。帰ろう、ヴィクトル」
ヴィクトルから手をはなし、徹は一歩引く。
日本のユーリと同じく、ヴィクトルに背を向けた徹を見つめ、またヴィクトルは動かなかった。