第3章 再会!帰郷のリンクメイト!
「いっ、言えるわけないだろっ……ヴィクトルが頷いてくれるかもわからないのに!」
「それが馬鹿だって言ってるんだ。トールは俺に対してもっとワガママになるべきだ」
「ワガママ?ワガママなのはヴィクトルだろっ!いっつもいっつも、俺の指示通りに動かないくせにっ」
「あれ?トール怒ってる?俺すごく良い事言ったと思うんだけど」
ムードも何もなくなって、徹は涙を浮かべたまま笑った。
いつもの二人の距離感だ。
笑う徹を見たヴィクトルも、また優しく微笑んで、いつものように額と額をよせる。
「あー、なんか、馬鹿らしくなってきた」
「だろう?それでトール。これからどうするんだ?」
「辞めない。僕はこれからも、ヴィクトル・ニキフォロフのコーチでいる」
「ワオ、俺の意思は無視?」
「さっきYESって言っただろ」
「あぁ、そうだった」
「まだ誰も見たことのない、ヴィクトル・ニキフォロフを僕が創り上げる」
「期待しているよ」
ルーティーンを思わせる、手の甲へのキス。
だが今回は、ヴィクトルの唇が徹の甲へ触れた。
皇帝からの賞賛のくちづけだった。
「お前らいつまで準備してんだよ!いい加減にしろ!!!」
荒々しく、ドアを蹴破るんじゃないかという勢いで、ユーリ・プリセツキーがのり込んできた。
もうそこで、本当にムードが何とか、シリアスがどうのとか、そういうのではなくなってしまって、徹とヴィクトルは顔を見合わせて笑う。
「な、何笑ってんだよ……」
「あー、ごめん、ユーリのことを笑ったわけじゃないから」
「あ?」
「悪かったね。もう行こうか」
目が合うたびにクスクスと笑う師弟を見て、ユーリ・プリセツキーは「なんなんだよ……」とぼやく。
この二人はいつもこんな感じだ。
二人の間でしか通じない言語があるかのように、言葉少なに互いを理解して、察して、対話している。
コーチと選手の結びつきは、ともに苦境を乗り越えることから強くなるというが、この二人の距離感と空気感はそういうのとは違う気がする。
もっと家族とか、親友とか、そういうような。
「ほんっとになんなんだよ、お前ら……」