第3章 再会!帰郷のリンクメイト!
リンクサイドで語る内容はスケートとは関係のない事柄ばかりだったが、その他愛もない会話が、昔に戻ったようだった。
デトロイトに来てから友達はそれなりに増えた。
だが、徹のようにあけすけになんでも話せる相手はそういない。
厳しいトレーニングで張り詰めた精神がほどけるようで、勇利は徹との会話に夢中になった。
なりながら、違和感の正体を探っていた。
笑う徹はいつも通りだ。
思案に目を伏せる仕草。
笑うときには口元へ指をよせ、男のくせにそれが様になっていて、艶っぽいのには目を奪われる。
こういう優美さが演技にも出ているから、彼の滑走は魅力的なのだ。
あぁ、そうじゃない。
勇利は見惚れてしまう自分を追い払って、再び感じる違和感の正体を探した。
だがどう見ても彼自体に変化はないような気がしてしまう。
なにか、何かが違うのではないか?という疑念は抱けるというのに。
「そうだ、徹。昔みたいに僕のこと見ててよ。それとも、徹の靴借りてくる?」
「ダメだよ勇利。僕、これでもお休み中なんだから。勇利が滑るとこ、見せて。僕はここにいるから」
ほら、と背中を押されて、勇利は滑り出す。
リンクサイドで頬杖をついて勇利を見ている徹はコーチみたいで、小さな頃は選手とコーチごっこをしてはしゃいだっけ、と懐古がよぎった。
滑走の最中はリンクサイドなんか見えない。
けれど、勇利が彼へ背を向けた一瞬、またあの違和感が背筋を走った。
慌てて徹の方を振り返る。
「あれ、やめちゃうの?」
頬杖をついたまま、笑う徹がいた。
やっぱり自分の気のせいなんだろうか。
あまりに久しぶりに彼に合うものだから、調子が狂ってしまったのかもしれない。
違和感の正体を勇利はそう結論づけた。
「ねぇ勇利、四回転フリップは?」
「ええっ、それはちょっと……」
「勇利はヴィクトルのファンでしょ?」
「ハードだよ徹……」
それが、徹と最後に会話した記憶だ。
勇利と会った一週間後、徹は引退を表明すると同時に、ヴィクトルのコーチとして活動することを宣言したのだった。