第3章 再会!帰郷のリンクメイト!
「大会5連覇、ヴィクトル・ニキフォロフ圧巻の演技……滑走後、コーチの宮樫徹と見せた笑顔………宮樫、ヴィクトル・ニキフォロフの魅力を引き出す…………」
勝生勇利はネットニュースに並ぶ名前に、少しだけ安堵していた。
スクロールしてもスクロールしても、出てくるのは新進気鋭の青年コーチ、宮樫徹の名前だ。
自分のことは残念だった、とおまけ程度の記載で、酷いところなんかは、勇利への言及を避けるかのように一行ですませられていた。
コーチのチェレスティーノが何やらわぁわぁと声を上げていたが、勇利の耳には全く入っては来なかった。
宮樫徹。
画面に浮かぶ名前をなぞり、喉の奥でぼそりと呼ぶ。
徹と勇利は、幼馴染でリンクメイトだった。
徹の方が先にスケートを始めていたのもあって、彼は勇利に先輩風を吹かせ、よくコーチングしてくれたものだった。
出発地点は同じだった。
同じ、田舎のスケートリンクだった。
同じはずだったのに、今、自分と彼の間にある差はなんなのだろうか。
勇利が徹に最後に会ったのは、今のシーズンが始まる前。
怪我で休養をとっていた徹が、突然勇利のいるデトロイトへやってきた。
「久しぶり」
長谷津にいた時と同じように、ほんの少し先輩風を吹かせ、はにかむ彼を勇利は歓迎した。
チェレスティーノも徹を歓迎したし、デトロイトのリンクメイト達も徹の登場にテンションが上がっているようだった。
グランプリファイナル出場者で、表彰台に上がったこともある人物なのだから、当然だった。
「徹、怪我はいいの?」
「うん、まぁ悪くはないよ。勇利はどう?スケートは楽しい?」
「当たり前だよ!良かった、ニュース見てからずっと心配だったから……」
「連絡、してくれれば良かったのに」
「…………あ、僕、実はこっち来てから携帯壊してさ……電話帳とか、全部ダメにしちゃったんだ」
ほら、と勇利は困ったような笑顔を浮かべて、スマートフォンを振った。
「馬鹿だなぁ。あんな頑丈なもの、どうやったらダメにしちゃうんだ?」
「それが、落としたところを車が通って……」