第5章 現れた天使
『おはよ〜……ふわぁぁっ』
「おはようございます。 朝ご飯出来てますよ」
『ん……食べる』
人間の食事は淫魔にとっては食べても食べなくても変わりはしないが、断っても毎日作る紅楼に負け食べる事にしたのだ。
どういう味とか、何を使ってるとかは全く分からないがとりあえず椅子に座る。
『ん〜…………ん? ふぅん……』
「何してるんですか」
『いやぁ、コレ何かなって……はっ?!』
「それはフォーク……って、どうしたんですか?」
が口を半開きにしながら見つめる先にはコップに注がれた牛乳が。
紅楼の問いにも答えずに数秒、時が止まったかのように静止し、カタカタと小刻みに震えながらゆっくりと口を開いた。
『く、紅楼……っ。 これ、って…!!』
指差しながら真ん丸になった目を向けてくるの様子を見て紅楼は察してしまった。
とんでもない勘違いをしているという事に。
「……、それは期待している物とは違いますからね」
『えっ?! 精液じゃないのっ?!』
やっぱり。
分かってはいたが、分かってはいたのだが……呆れずにはいられず大きなため息を吐く。
※淫魔は牛乳を精液と間違える事がある。
「資料で読んではいましたが、ここまでとは……」
『な! だ、だって似てるんだし!』
頬を膨らませ下を向いてしまう(名前)、その尻尾はペタンと床についてしまっている。
そんなにガッカリしなくても。
「夜まで我慢して下さいよ。 一回だけとは言いませんから」
『え……』
紅楼の言葉に視線を上げれば「いただきます」と朝食を食べ始めていた。
無性に嬉しくなり尻尾を振りながら手を合わせた。