赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第1章 赤い空を仰ぎ、
放課後の当番で遅れ、部活に向かったのは5時を回った頃だった。今日はミーティングがあり、それで解散の筈だ。木兎さんが正式にはキャプテンだが、あの人に任せたらどうなることやら。
「すみません、遅れました…」
部室のドアを開けると、遅いぞーと一斉に野次が飛んできた。
「あかーしぃ、お前おっせーぞぉ!」
「木兎さん…今日は当番だから遅れるって、昼休みに言ったじゃないスか」
「ソウダッケ?」
首を傾げる木兎さんは、本当に忘れていたらしい。先輩しからぬ姿に苦笑しながら、カバンから人数分のプリントを出し、説明を始める。
「えーと、今週末が春高代表決定戦前最後の合宿になります。なので調整しつつ…」
「あかぁし声ちっせーぞ!」
「うるさいですよ木兎さん。そもそもこれ、木兎さんの仕事なんですからね」
文句だけは一人前の木兎さん。色々からかわれたり口出しされながらも、なんとかぐだぐだな説明をおえた。
職員室に部室のカギを返しに行こうとして、後ろからあの喧しい声に引き留められた。
「赤葦ートス上げてくれー!」
「あの、早く帰りたいんですけど…」
「いいじゃん!木葉もブロック飛んでくれよ!小見やんも猿も鷲尾も練習しようぜ!」
「「「えぇ…」」」
残念なことに木兎さんに捕まって、そこから帰るのは至難の技だ。仕方無く6人で体育館に向かい、一面だけコートを作る。
「あと1時間くらいしかできませんよ?」
「おう!早くやろーぜ!」
やる気だけは十分な木兎さんは、軽くストレッチをしている。そこへ木葉さんがボールのカゴを押してきた。戦力が偏らないように分けると俺は、木兎さん、木葉さんと同じチームになった。
そっから30分くらいひたすらゲーム。拾って上げて打って止めて。繰り返し繰り返し、何度も練習を重ねる。そしてその後は、案の定木兎さんの魔のスパイク練習。
「木兎ぉ…マジで疲れたから帰ろーぜ…」
「木葉クン大人気ないぞぉっ!」
「木兎さんそれ用法違いますよ」
「情けないってイミなの!」
そうして木兎さんと木葉さんは取っ組み合いを始めた。相も変わらないやり取りに今日何度目かの苦笑を浮かべる。
後片付けを始めると、がらり、とドアの開く音が聞こえてそちらを振り向く。そこには俺の幼馴染みの姿があった。