赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第3章 雨の声を聴く。
木葉の教室に着いた時には、既に息が上がっていた。ガラッとドアを開けると、中にいた生徒達が驚いて振り向く。
「え、雨宮!?」
『あ、いた…木葉、ちょっと来て!』
「え…っあ、おい!俺メシ食ってる…」
『早く!』
ずかずかと教室に入り、菓子パンをかじる木葉の腕をむんずと掴む。そのまま飛び出して走り、今度は赤葦君の教室へ。
「なぁ、どうしたんだよ。距離置くって…」
『それも、全部話すから、待って!』
階段を飛ばして駆け登り、2年6組に辿り着く。赤葦君を手招きして呼ぶと、そのまま2人を連れて屋上へ出た。
「あの、雨宮さん…」
「雨宮、急にどうしたんだよ」
怪訝そうな顔の2人を正面から見詰める。すぅっと息を吸い、それから口を開く。
『私ね、中途半端なの』
「「は?」」
2人分の疑問符が重なる。そりゃそうだ、急に中途半端だなんて言われて、わかるわけ。
『赤葦君のことも、木葉のこともそう。何に対しても中途半端だったの』
「え、何が中途半端なの?」
私の言葉を遮る木葉。
『昨日はあんなこと言っちゃってごめんなさい。木葉のこと傷付けたってすごい後悔した。もっと、別の言い方があったのに…』
「いやまぁ、ビビったけど、辛かったけど!…けど雨宮ちゃんと落ち着くまで、俺はいくらでも待ちたいと思う…ぞ?」
真っ直ぐに見詰めて、木葉はそう言った。私は酷いことを言ったのに、それても木葉は、私を待つと言ってくれる。嬉しいを通り越して、なんだか申し訳なくすらある。
『私、付き合ってすぐは木葉のこと好きじゃなかった。それに木葉が、彼氏がいるのに頭の片隅にずっと赤葦君がいた…』
「え、俺?」
罪悪感に苛まれ、思わず視線が下を向く。ううん、ちゃんと、上を向かなくちゃ。
『中学の時、赤葦君とあんなになっちゃってから、ずっと後悔してて。でも私意気地無しだから、話し合うことから、逃げてて…』
「あー…あれは俺もガキだったんで。雨宮さんの言葉聞いて、望みないんだなって勝手に拗ねて、それで…」
『ううん、私の方が。ちゃんと赤葦君に向き合うべきだったのに。だから木葉も、赤葦君も、本当にごめんなさい』
90°に腰を折り、地面を見詰める。2人がどんな顔をしているか、少し、怖かった。