赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第3章 雨の声を聴く。
木兎の手が頬から離れ、行き場をなくし、木兎はおろおろする。もちろん、小見も。そりゃ当たり前だ。急に泣き出すんだもの。
『っく、えぇん、ぼく、とぉ…っこみぃ…』
「お、おっおおっ落ち着け雨宮!」
「まずは木兎が落ち付けよ!」
「小見やんだって焦ってんじゃねーか!」
わんわん泣く女子生徒、その周りでぎゃーぎゃー騒ぐデカくて小さな男子2人。端から見たら、ただのカオスだ。
「あんま難しい話はわかんねえけどさ、俺らでよかったら、聞くぞ?」
顔を手で覆い嗚咽を抑える私、その背中を木兎がゆっくり擦ってくれた。
『あのね、っ私、木葉のこと、最初は好きじゃ、無かったの。でも、最近、好きなのかなって、思って。なのに、赤葦君が、気になっちゃって、も、わけわかんな、くて』
ぐちゃぐちゃだった心の中。言葉にすれば、少しずつ解れていって。話を聞いてくれる人がいるだけで、こうも心強いなんて。
「んー、雨宮は木葉と付き合ってて木葉が好きだけど、あかーしも好きなのか?」
ざっくりと略して言う木兎に、私は力無く頷いた。私、最低だ。木葉にも赤葦君にもひどいことしてるんだ。想いを踏みにじってる。
「なんだよ。好きなら好きでいーじゃん」
…………え?どういうこと?
『でも、私…』
「別にどっちか選ばなきゃ死ぬ!とかじゃないんだろ?ならどっちも好きでいーじゃん」
ケロリとして言う木兎。なんだ、答えはそんなに簡単だったんだ。難しく考えすぎてたのかな、私。目尻の涙を拭い、ふにゃりと笑うと木兎の手がわしわしと頭を撫でた。
「おーおー、雨宮笑ってんじゃん」
「木兎は簡単に考えすぎだけどなー。でもまぁ、俺もそう思うよ。雨宮がちゃんと伝えたら、木葉も赤葦も納得すると思う」
『木兎、小見も…ありがと。なんかすごい、気持ち、楽んなったかも』
今度は涙に濡れた顔じゃなくて、ちゃんとにっこりと笑えた。そんな私に、木兎と小見もニカッと弾けるように笑う。
木葉に、赤葦君に会わなきゃ。もう私は、逃げないから。そう決心すると、2人にもう一度お礼を言い、私は走り出した。
「元気出てよかったな!」
「なんかあったら相談のるぞー!」
聞こえる2人の声に励まされつつ、私は走った。目指す先は、それぞれの教室。