赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第3章 雨の声を聴く。
次の日、朝起きるとやっぱり雨だった。天気予報では、この後も断続的に雨が続くようだった。晩秋に降るこんな雨を、人は時雨と呼ぶそうだ。
そんな小雨のぱらつく朝の道を、カサを差して歩く。足元のアスファルトは雨に塗られて真っ黒になっていて、私の心をそっくりそのまま映したような色だった。
一応、3年3組を覗く。そこにはクラスメイトと楽しそうに笑う木葉の姿。声を掛けようとして、木葉がこっちを向く。バレると思い、咄嗟にドアに隠れる。
『ダメだ…言えないよ…』
私の意気地無しめ。このままじゃ、いつまで経っても変われやしないじゃないか。そう自分を責める中、また今度謝れば良いんだ、と考えてもいる。
どこまでも適当で、中途半端な自分が、吐き気がするほどに、嫌になった。
昼休み。お弁当を友人と食べ終え、いつもの日課として図書室に向かう。と、ドアに付いている窓ガラスの奥に、カウンターでパソコンに向かう赤葦君の姿があった。
昨日あんなことがあったからか、どうにも顔を会わせずらいと思ってしまう。下唇を噛み、私は図書室に背を向けた。
行く宛もないので、校舎内を歩く。と、中庭のベンチに木兎と小見の姿を見付けた。
今の私のこの精神状態で、常にハイテンションな彼等に会うのは、死ぬようなものだ。そう察した私はそろりとバレぬよう立ち去…
「あ、雨宮!こっち来いよー!」
…ることができなかった。
仕方無く中庭に下りると、木兎と小見の間に座らされる。なんというか、最悪だ。
「珍しいな、木葉と一緒じゃないのか」
『ご覧の通りです』
「え、雨宮、なんか冷たくない?」
『誰のせいでしょうかねぇ』
むすっとして木兎に答えると、木兎の手が伸び、顔をガシッと捕まれる。
『ひょっほ、らりひゅるろ!』
「俺が、なんで声掛けたかわかるか?」
いつになく真剣な木兎に、首を横に振る。
「雨宮、ツラそうだったから。ほっといたら、なんつーか、死にそうだなって…」
「おい木兎!雨宮殺すな…っ、え…」
「なんで小見やんだまっ…雨宮…?」
小見の声が、木兎の顔が、驚きの色を写している。なんでかはすぐにわかった。
『っ、ぼ、くと…っこみぃ…』
昨日あんなに泣いてたのに、私の目からは涙が溢れ、頬を掴む木兎の手を濡らしていた。