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赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。   《ハイキュー!!》

第3章 雨の声を聴く。




"及第点は取るのに満点を目指さない"


"疲れない程度に一生懸命"


"合格ラインは通るけど中途半端"


大人から私への評価は、いつもだいたいこんな感じだった。与えられた仕事はこなすけれど、それ以上は決してやらない。人との間も上手く立ち回り、火花が自分に飛ばないようにする。そしてなにより、中途半端。

やることはやる、でも、やりきらない。

小学生の時に付いた習性は、そうそう変わることはなく、周りの雰囲気に流されるのもしばしば。だから、中学でなんとなく入った吹奏楽部は1年経たずに辞めた。

そんな適当な私でも、赤葦君は"実緒姉ちゃん"と後をついて回り、慕ってくれた。すごく、嬉しかった。変わらないと思っていた彼との関係も、いつの間にかぎこちなくなっていた。


高校生になり、なんとなその状態から脱却しようと思い、美術部に入った。絵を描くのが好きだったのか、私は放課後に美術室に行くのが好きになっていた。

2年になり、委員会にも入ってみた。言われたことだけじゃなく、自分で考えて動くのは大変だった。でもそれだけに、成功した時の達成感は大きかった。

いたって平凡な私に転機が訪れたのは、高校3年の夏だった。委員会が同じ木葉に告白されたのだ。人生で初めての告白。懸命に想いを伝える木葉に、気が付けば首を縦に振っていた。

でも、少しだけ、気掛かりがあった。

ちらりと脳裏を掠めたのは、赤葦君のこと。

中学でその関係を友人にからかわれ、ついムキになって"弟みたいなものだ"と言った。その翌日なら、彼は急に他人行儀になった。

あの会話を、きっと聞いていたのだ。それから彼は"実緒"と名前で読んではくれない。私もなんとなく"赤葦君"と呼んでいる。

あ、また、私"なんとなく"って思ってる。

"なんとなく"でも、自分で決めたことなのに。どうして私は、後悔してしまうのだろう。

私は自分が嫌で、どうにかしたくて、木葉にもちゃんと向き合おうと思ったのに。

なんで、あんな言葉しか出なかったのだろう。もっと何か、あったはずなのに。

自分のしてしまったことの大きさに気付き、止まっていた涙が堰を切ったように溢れ出す。本当に辛いのは、私じゃなくて、赤葦君と木葉なのに。


失って、初めて、その大切さに気付く。


いつまで経っても、私は変われない。


   
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