赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第2章 秋の風に吹かれ、
翌日。わかってはいたものの、制服はやっぱりシワになっていた。シャワーを浴び、既に出勤した母さんが作った朝食を食べる。
「いってきまーす」
誰の返事もないとわかっていながら言ってしまうのは、長年の習慣からか。いつもより時間に余裕があったので、ゆっくり歩く。
ふと、昨日雨宮と別れたコンビニの前に、ウチの制服を着た女子を見付ける。近付いてみると、それは雨宮だった。
『木葉、おはよう』
「はよ。つか何してんの?」
『待ってたら、木葉来るかなぁって』
予感当たったね、とはにかむ雨宮。照れ隠しにそっぽを向き、行くぞと声を掛ける。後ろからついてくる雨宮を振り向くと、外でずっと待ってたからか耳が赤い。
「ん、手ぇ貸して」
『はい。っえ、木葉…///』
雨宮の手をむんずと掴み、そのまま俺のコートのポケットに突っ込む。俺の思っていた通り、それは冷たい。
『あったかい…ありがと、木葉』
「おう」
その時、冷たい北風がびゅうと吹いた。ザアァっと木が揺れ、枯れ葉が舞う。ちらりと隣の雨宮を見遣ると、何かを堪えているような表情をしていた。
本当なら声を掛けるべきだったのだろうが、俺はそんな気の利いたことはできず、繋いだ手を強く握るのだった。
その日は珍しく、体育館の点検だとかで部活が休みだった。だから雨宮と帰ろうと思い教室まで迎えに行くと、そこに雨宮の姿はなかった。代わりに木兎に訊くと、図書室じゃないかと答えた。
半信半疑で行くと、雨宮は本当にいた。カウンターで本を借りているのかと思ったら、当番の赤葦と話している。
『それでね、その主人公が…あ、木葉!』
俺に気付くと、雨宮は人懐っこい笑顔で走り寄る。赤葦は俺に軽く会釈した。
「よ。木兎にここにいるって聞いて」
『そっか、ごめんね。本を借りたら一緒に帰ろ、って木葉のこと誘おうと思ってたのに、赤葦君と話し込んじゃって』
雨宮も赤葦も、本が好きだ。共通の話題があるから盛り上がるのだろう。
「あかーし、当番いつ終わんの?」
「あ、もう閉館なんで、終わりますよ」
「そ。なら3人で帰ろうぜ」
『ほんと?やったぁ』
そうして俺達は3人で帰ることになった。