赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第2章 秋の風に吹かれ、
「へー、2人のナレソメってそんなか!」
「まぁ、ざっとだけどな」
小腹が空いたからとコンビニで買った肉まんを頬張りながら、木兎が言う。あいつらに教えてやろう、とワクワクする様子から、明日には学校中に広がるだろう、と俺は思った。
「いいなぁリア充。俺も彼女ほしーな!」
「それな、わかるわ」
「でもこの時期に恋とか自殺行為じゃね?」
彼女ほしー!と叫ぶ小見に、猿杙も同調。そんな中で木兎が珍しく正論を唱える。1月に控えたセンター試験や春高、またその予選のことを考えると、時間があるとは思えない。
「くっそぅ、ウラヤマシイぞ木葉ぁ!」
「いっ、いって、木兎ヤメロや!」
ばっしばっしと容赦なく背中を叩く木兎。そんな様子を見ながら、小見が呟く。
「雨宮もいいヤツだもんなぁ。なんでMr.器用貧乏の木葉を選んだのかがわからん」
「小見やん、何気失礼なのな」
「マジでいい彼女だよなぁ。雨宮可愛いし、気も利くし。クラスでも人気者だかんな」
羨ましい、と再度口を尖らせる木兎。小見や猿杙からもブーイングを受け、付き合ったもん勝ちなんだよバーカと舌を出す。
「でもホント、お前らいいカップルだよ」
俺が言うんだから間違いないね!とドヤる木兎に、むしろ不安になるからと毒を吐く。嘆く木兎にみんなでげらげら笑う。
ふと見上げた空は、あの日2人で見た時のように、どこまでも色鮮やかで、綺麗だった。
家に帰り、ボフンとベッドに倒れ込む。ポケットからスマホを出すと、雨宮から一件。開くと"お疲れさま"というメッセージと共にかわいらしいスタンプが。
こーゆーとこがかわいいんだよな、と一人ニヤけながら返信を返す。すぐに既読が付き、そのままトークすること数分。互いに晩ご飯があるので、またあとでね、と画面をOFFにした。
親は帰宅が遅いので、家には俺一人。そうなるとさっきまでの木兎の騒がしさとか、雨宮のトークだとか、そういうのが急に恋しくなる。
木兎はお似合いだと言ってくれるが、正直なところ最近は微妙だ。俺は部活で忙しいし、雨宮も勉強が忙しい。告白した直後はよかったのにな…そう思うと余計悲しい。
「なんか色々、疲れた…」
制服を着替えることもせず、夕飯も食べず、俺はそのまま眠りへと落ちてしまった。