赤い空、秋の風、耳に届くは雨の声。 《ハイキュー!!》
第2章 秋の風に吹かれ、
雨宮の両サイドに俺と赤葦が並んで歩く。
「そういえば雨宮さん」
『なぁに?』
「木葉さんのどこが好きなんですか?」
「おい赤葦、てめっ!」
急に何を言い出すんだ、こいつは。わたわたする俺に雨宮はこう言った。
『不器用な優しさ…とか?』
とか?ってなんだよ、とつっこみ、それから3人で大声で笑った。一頻り笑って他愛のない会話。その中でも、雨宮の表情がいつもより暗くて、少し気になった。でも、朝と同様にやっぱり何も言えなかった。
そうして昨日別れたコンビニの前に着く。送らなくていいと言う雨宮に、もう少しいたいから、と俺は雨宮の隣を歩いた。本当は赤葦と2人きりにしたくないだけ。そんなこと、死んでも言えねえ。
「じゃあ、また明日」
『ばいばい』
「じゃーな」
見慣れた白い壁の雨宮の家。玄関まで送り、またなと告げて、踵を返す。と、何かに引っ張られる。振り向くと、雨宮が制服の裾を掴んでいた。
「雨宮…?」
俯いたまま口を開かない雨宮。こういうときは、待った方がいい。しばらくして、おもむろに雨宮が口を開く。
びゅう、と風が吹き抜ける。聞き取りずらかったが、その言葉は嘘ではなかった。
"私達、少しだけ、距離、置こう?"
一瞬、頭が真っ白になった。
「…なんで?」
そんな素振り、なかったのに。今まで、笑ってバカみたいな話して、楽しかったのに。
『…理由は、言えない。でも、ちゃんと、木葉に向き合いたいから。だから、待ってて』
ごめん。最後にそう言って、雨宮は家に入っていった。何も考えられなくて、雨宮の背中の消えていった玄関を見詰め、それから走る。
何も、考えたくなかった。
走って走って、家の近くの公園に着く。見上げれば、どんよりとした灰色の雲が天を覆っている。ぽたりという水滴は、あっという間にどしゃ降りになり、俺を濡らす。
曇天に、白く線を引く雨。
雨宮の声が、頭から離れない。
風がどんなに強く吹こうと、
雨がどんなに強く降ろうと、
消えるはずが、ないのに。
俺の中で、雨宮は一番大きいのに。
俺はそれを、失いそうだ。
そうしたら俺は、どうすればいい?