第12章 失われた言葉
「このやろォ…人が下手に出てればいい気になりやがって…!」
「まぁまぁ落ち着けって、…ねェちゃん達も二度目はない、今の発言は忘れてやるから仲良く飲もうや」
怒る仲間を宥めながら他の男が口を挟む、仲良くと言いながらもその目は鋭く、断る事は許さねェと言ってるようだった。
気付けば酒場にいる全員が下劣な笑みを浮かべてユナ達を見ていた…どうやらここにいる全員は仲間のようだ、どうしたものかとロビンを見ればやれやれといった感じで肩を竦めていた。
「そっちこそ二度も言わせないで、その”クリケット”と言う男の居場所を教えなさい」
今度はお願いではなく命令口調で強気に出れば男の態度が次第に変わっていく。
「強気な女は好きだが相手を選んだ方が良いぜ…俺たちは海賊だ、怒らすとどーなるか教えてやろうか?」
「あら、折角だから教えて貰おうかしら」
不敵に笑ってロビンが言えばそれが合図だった、店にいる全員が各々武器を手に立ち上がる。それを見たマスターがユナ達を心配して声を掛けるが大丈夫だとユナが返した。
「…っ、後悔してももう遅いからなァ!」
言いながらロビンの前にいた男がナイフを振り上げながら迫って来る。
「そういう物騒なもの…わたし達に向けないで──”ベインテフルール(二十輪咲き)”」
「な、なんだ?」
ロビンの能力で男達にロビンの手が咲き乱れる。
「”クラッチ”!」
「!!?」
咲き乱れた手は次々に関節技を極めていき、店にいた男達の殆どを沈めてしまった。
『わぁお、ロビンかっこいィ』
「ふふ、ありがと」
「お、お前!能力者か⁉︎」
唯一ロビンの攻撃を受けなかった男が声を荒げる…この男は確か先程”クリケット”とがどうこう言ってた男だ。敢えて残したのか…確かにその方が情報は得易い、ロビンも中々に場慣れしているようだ。
「くっ、クソ!」
能力者相手に自分一人しか残ってないと分かると男は出口目指して駆け出した、勝てないと悟ったのだろう、男もそれ程バカでは無いらしい…だが。
『”アンディフトアーネモ(逆風)”!』
男があと一歩で外に出れるというところで突然入り口から突風が吹き込む、それにより男は情けなくも突風に耐え切れずユナ達の足元へと転がり戻ってきた。