第9章 また逢う日まで
『…そういやルフィっていつも”麦わら帽子”被ってるなと思って…大切なものなの?』
自分にも今、オレンジ色のテンガロンハットがある…これはエースから預かっている大切な帽子だ、約束のその日まではユナの宝物だ。
「あァ、この帽子は”シャンクス”から預かってる大切な帽子だ」
『シャン…クス…?』
ルフィの口から出た人物の名にユナの目が微かに見開いた。
シャンクス…またの通り名は”赤髪のシャンクス”ユナが乗っていた”白ひげ海賊団”もそうだが、この海でその名を知らない海賊は先ず少ないだろう、それ程までに名の知れ渡っている大海賊だ。
帽子を手に取るとルフィは懐かしそうにシャンクスの事を話し出した、立派な海賊になっていつかシャンクスに帽子を返すその日まで預かっている事。ルフィにとってシャンクスは憧れの海賊であり命の恩人でもあると教えてくれた。
それからルフィの夢は───。
『…そっか……』
話しを聞き終わるとユナは静かに瞳を閉じた。今…分かった事がある、ルフィから感じていた懐かしさはルフィが”あの人”と似ているから、だからシャンクスも麦わら帽子をルフィに託したのだろう…なら私は──。
目を開きユナは立ち上がると徐にルフィを見上げた。
──二人の視線が交差する。
『…ルフィならきっとなれるよ──”海賊王”に!』
ルフィは一瞬目を見張った…沈む夕陽に照らされたユナの髪はいつもの栗色とは違いオレンジ色に染まっていて、そのせいなのかふわりと微笑むユナは何処かキラキラと輝いて見えた。
「キレイだな!」
『……へ?』
「にっしっしっ!ありがとなユナ!」
何がキレイなのかとルフィに聞き返そうとしたが、満足気に笑うルフィを見るとどうでも良いかとユナは再び微笑んだ。
例え足手纏いでももう少しだけルフィ達と一緒にいてみたい、エースとの約束もあるが所詮自分は居候だ、お荷物だと言われればそれまで…だからそれまでは出来る限り力になろうとユナは一つ決心する。
「そんじゃ帰るか!」
『え…』
言うが早いかルフィはユナを脇に抱えると勢いよく飛び降りた、ユナ達が居た場所は王宮の天辺だ普通の人間なら飛び降りれば死は免れないだろう。