第9章 また逢う日まで
強くなったつもりだった、もう…大切な人を失わない為に──。
でも実際はそんな事は無かった、思い返してみてもエースと二人旅していた時も白ひげの所にいた時も、その前だって…エースが、仲間がいつも助けてくれてたんだと思い知らされた。
膝を抱える腕に力が入る。一人だと何も出来ない、いくらルフィ達がお人好しでもこんなお荷物船には乗せたくないだろう。
『……やっぱ船降りるべきかな…』
無意識に呟いた言葉は、誰に届く事もなく消えて行く──ハズだった。
「船降りるなんて許さねーぞ」
突然降って来た声にユナはピクリと肩を震わすと徐に顔を上げた。
「こんなとこにいたのかユナ、みんなのとこ帰るぞ!」
夕陽をバックに現れたその人物の顔は分からないが、麦わら帽子を被ってニッと笑った気配が懐かしい人物を思い出させる──。
【見つけたぞユナ、みんなのところに帰るぞ】
『──ロー………っ、ルフィ…』
思わず出そうになったその名を呑み込んでユナは目の前の人物の名前を呼ぶ。
『…もう大丈夫なの?』
「あァ、もうすっかり元気だぞ!」
ユナが起きた時はまだ意識が無かったルフィを心配して聞けば、ニッと笑って大丈夫だと言われた。
ユナを探して暫く町中を駆け回っていたルフィだったが、どうやら高い所から見渡した方が早いと考えこの町で一番高いこの場所に来たらしい。
「もうすぐ夕飯だからよ、迎えに来たぞユナ!」
嬉しそうに言うルフィに対してユナの顔はどこか晴れない。その顔を見たルフィが腹でもいてェのかと聞くが、聞かれた本人は夕陽を見つめたまま何も応えなかった。
ユナの言葉を待っているのかルフィもそれっきり喋らず静寂が二人を支配する…、やがて一陣の風が吹き抜けるとユナが徐に口を開く。
『……ねぇルフィ…』
「なんだ?」
『私──……』
足手纏いにならない──?
浮かび上がった言葉はしかし音になる事は無かった。
「ん?どーしたんだ?」
黙り込んでしまったユナを心配してルフィが顔を覗き込めば、何でもないとユナは頭を一つ振った。