第8章 終戦
ビチャ…ビチャ…と明らかに雨音とは違う音にゾロは神経を集中させる。これは…身体を引き摺っているのか、微かに違う足音に前方の通路を睨み付けたその時。
『あ…』
「お」
ひょっこり顔を出したのは今まさに自分達が探していた少女だった。
「あ〜なんだユナじゃない…驚かせないでよ〜」
見知った顔にゾロもナミも警戒を解く、ユナと言う単語に今までナミの鉄拳で撃沈していたサンジはシュバっと起き上がった。
「ユナちゃん大丈夫?無事でよかった…!」
『うん大丈夫、みんなも無事でホントよかった…』
やっと会えた仲間にユナもサンジ達も胸を撫で下ろした。そしてはたと気付く。
『あれ?ルフィは?』
ユナの言葉にこれから回収しに行くんだとサンジが答えてくれた。クロコダイルがやられるのは見たが七武海の一人と戦ったのだ…きっと死闘だったに違いない、早くルフィの無事を確認したい、はやる気持ちを抑えつつユナはみんなに向き直る。
『じゃあ早くルフィを探しに行こう』
なるべく平静を装って踵を返し歩き出そうとしたその時。
前方に何か見えるのに気が付いた、降り頻る雨のせいで視界が悪いが確かに人影がそこにはあった。雨で張り付く髪を払いながらユナは眼を凝らす…。
『…あ!』
「お、いたか…」
目の前に現れたのは宮殿で見掛けた顎髭が特徴的な中年の男だった。その背中には傷だらけのルフィが背負われていた。
「おや、………君達は?」
「……アァ、あんたのその背中のやつ運んでくれてありがとう、ウチのなんだ引き取るよ」
サンジが申し出れば中年の男はビビをこの国まで連れてきてくれた海賊達とは君達かと返して来た。
「ア?おっさん誰だ?」
怪訝に眉を寄せてゾロが問えば、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「みんな‼︎……パパ⁉︎」
「…パ、パパ⁉︎ビビちゃんのお父様⁉︎」
「あんた国王か」
通りの向こうからビビがやって来たのだ、どうやら顎髭が特徴的なこの中年の男はアラバスタの”国王コブラ”だったようだ。
彼が言うには一度は死を覚悟したがルフィに救われたそうだ、クロコダイルと戦ったその身体で人二人抱えて地下から地上へ飛び出したらしい。