第7章 タイムリミットとビビの声
屋上まで来るとユナは静かに瞳を閉じる、意識を集中させ風を伝って辺りを探る…感じるのは人の怒り、苦しみ、悲しみ、焦り、怨み、負の感情が渦巻く中で目的のものを探す。
塵旋風の影響もあって上手く風を伝えないが全神経を集中させて風が教えてくれる情報を読み取る、5kmもの威力がある砲弾だ…広場に打ち込むのには何処か見晴らしのいい場所と隠せる場所が必要のはず。
考えユナは一つの建物に気が付いた、それは時計台だ。風が云うには時計台の内部は登れるらしい、では最上階は…。時計台なら十分広場を見渡せる高さにあるだろうし、内部に入れるならそれなりの広さもあるだろう。
…ビンゴ。
ユナの読み通り時計台の最上階には砲弾が設置されていた、その近くには狙撃手だろうか可笑しな格好をした男女が2人いる、恐らくはB・W…。
早くみんなに知らせないと、そう思い踵を返した時前方に赤い発煙筒が上がっているのに気が付いた。煙りが上がっている場所は今まさにユナがみんなに知らせようとしていた時計台の近くだった、”合図”だ…誰かが見つけたんだ。
なら早く合流しないと…急がなければ時間が無い、一歩を踏み出したその時いきなり視界が歪んだ、慌てて足で踏ん張ろうにも上手く力が入らずそのまま倒れ込んでしまった。
『あ、あれ…?』
急に襲われた立ちくらみに、まさかと腹部を見ればウソップに応急処置して貰ったところが赤く染まっていた。
『あー…流石にこれは結構ヤバイかも』
血を流し過ぎた…、薄れる意識の中早く行かなきゃと思いつつも、言う事を聞いてくれない身体にユナはついに意識を手放した──。