第6章 ルフィvsクロコダイル
「……カ‼︎」
「……………‼︎」
「弱………罪な…………」
──声が聞こえる。
「コー……‼︎」
「…ビビ‼︎……雨………なんだ⁉︎」
「…くな……コーザ‼︎」
まだ覚醒しきれてない頭でユナはぼうっと聞いている、視界はまだ閉ざされたままだ。自分は何をしてたんだろう、そう考えるが如何せん頭が働かない。
とりあえず視界を確保する為ユナは力の限り瞼に力を入れた。先ず始めに視界に入ったのは芝生に横たわる自分の手だ、力を入れれば微かに指が動いた。
「お前なんかにわかるもんか…‼︎」
凛とした声が響いた、ユナは徐に頭を起こすと声のした方を見やる…そこに見えたのは恰幅のいい男、クロコダイルに首を掴まれ宙吊りになっている水色の髪の少女──。
『……ビビ…』
やっとの事で喉から出た言葉は掠れていてその声はビビには届かない。
「あら、起きたの?」
不意に降ってきた声に視線だけを動かせば黒髪の女がこちらを見下ろしていた。この女はクロコダイルといた…確か名はミス・オールサンデー、意識を失う前にそう呼ばれていた気がする。
記憶を遡り徐々に意識が覚醒していく──、そしてユナはハッとする…ルフィは、みんなは無事なのか。不意を突かれたとは言え意識を飛ばすとは何たる失態だ…ユナは悔しさに歯噛みした。
だが今は後悔している場合ではない、ビビを助けなければ。ユナは起き上がろうと腕に力を込める…だが思うように動けない。
「無理に起きない方がいいわ、貴女薬打たれてるから…それからコレも返しておくわ」
ポトっと目の前に見慣れたオレンジ色の帽子が落とされた、これはエースから預かっている大切な帽子だ。敵であるのにも関わらず態々持っていてくれたのか…何にせよ無くさずにいられて良かったとユナは心底安堵した。
帽子を握り締めるとユナはミス・オールサンデーが言った事を反復した。薬──、先程から感じていた違和感はそのせいか、芝生の上に横たわっているのにも関わらず身体にはその感覚がないのだ。
力も上手く入らない、恐らくは神経毒だろうか…それでも、今目の前で仲間が危機に晒されているのにじっとなんてしてられない。