第5章 ワニの家
どうしたものかと考えているとクロコダイルも何か考えているのか顎に手を当てて首を一つ捻った。
「…一つ提案なんだが」
その言葉に全員の視線が集まる。が次の言葉にルフィ以外が言葉を失った。
「てめェ、おれのとこに来ねェか…?」
『…なっ』
「おいワニ野郎ふざけんな‼︎ユナはおれの仲間だ‼︎おめェにはやんねェぞ‼︎」
予想外の勧誘だったのだろう、黒髪の女までもが何処か動揺してるように感じた。怒鳴るルフィの言葉は無視し尚もクロコダイルは続ける。
「なァに、悪い話しじゃ無いだろ?こんな所で捕まるような”船長”に付いてってもこの先ロクなことがねェだろうよ」
「それにもう直ぐこの国はおれのものになる…どうだ?一緒に高みの見物と洒落込もうじゃねェか」
その言葉にビビが顔を痙攣らせる、他の仲間達も怒りを露わにクロコダイルを睨め付けた。
そんな視線を物ともせずクロコダイルは再びユナに問う、真っ直ぐに視線を受けながらもユナは淡々と返す。
『…生憎だけど私、国取りに興味はないの。それに貴方は”船長”の器ですらないわ』
「そうか…それは残念だ」
残念と言う割には全く残念そうに見えないその物言いにユナは嫌な予感がした。
交渉は決裂、クロコダイルの攻撃の構えにユナも構える…が、一瞬クロコダイルの視線がビビを捉える、ヤバイと思った時には既に砂の刃がビビに向かって放たれていた。
『ビビ‼︎』
「…っ⁉︎」
「ビビ⁉︎」
「ビビ避けろ‼︎」
咄嗟のことでビビの反応が遅れる、目前まで迫った砂に反射的に目を瞑ったその時、風がビビを守るようにして壁になり砂の刃を撒き散らした。
『…ビビには指一本触れさせないわ』
「ユナよくやった!」
「ナイスだユナ‼︎」
「あァそうかい…だったらしっかり守らねェとな!」
言いながら再びビビに向けてクロコダイルは攻撃を仕掛ける、檻からはセコイだのココから出せだの罵声が飛ぶがそれには耳を貸さずクロコダイルは必要以上にビビだけを狙う。
『…ンの、いい加減にしなさいよ!』
全ての攻撃からビビを守る為クロコダイルに集中する、だから一瞬忘れていたのだ…もう一人の存在に。