第5章 ワニの家
クロコダイルはそれを見逃さなかった。
「ミス・オールサンデーその女を黙らせろ」
「…仰せのままに」
『…っ⁉︎』
咄嗟に黒髪の女の方を振り向くが突如として首に激痛が走り視界が歪む。背後には誰も居ないはずなのに手刀をくらわされた、これも女の能力なのか…ユナは忌々しげに顔を歪めるとその場に倒れこんだ。
「ユナ‼︎」
「ユナさん‼︎」
「なに⁉︎どうしたの⁉︎」
ルフィ達が心配する声を頭の片隅で聞きながらユナは意識を手放した。
「ご苦労ミス・オールサンデー」
「どう致しまして」
「──っ、ユナさん‼︎」
ビビがユナの元へ駆け寄ろうとしたその前にクロコダイルが無造作にユナを抱え上げた。
ビビはクロコダイルを睨み付ける。
「ユナさんをどうするつもり…っ⁉︎」
「そう睨むな…なァに悪いようにはしないさ……こいつが言う事を聞けばな」
ニイッと口端を釣り上げ不敵に笑うクロコダイルにビビは寒気を覚える、ついさっき会ったばかりのユナに一体何をさせると言うのか…皆目見当もつかないが絶対に良からぬ事に決まっている。
クロコダイルの攻撃から守って貰ったのに自分は仲間を助ける事が出来ないのかとビビは拳をきつく握り締めた。
「おいクロコダイル‼︎」
部屋一面に響き渡るその声にビビは振り向く。
「おれの仲間になんかしたらぜってェ許さねェからな‼︎」
「…クハハ、威勢だけは一人前だな麦わらのルフィ」
怒りの限りに叫ぶルフィに他の仲間もクロコダイルを睨め付ける、相変わらずだんまりを決め込んでいるスモーカーも片眉を上げて事の成り行きを見守っていた。
「さて…ちょうど頃合……パーティーの始まる時間だ、違うか?ミス・オールサンデー…」
ミス・オールサンデーと呼ばれた黒髪の女は懐中時計を取り出すと徐に時間を確認した。
「ええ…7時を回ったわ」
B・W社”ユートピア作戦”開始、アラバスタ王国の長い一日が始まりを告げた──。