第2章 別れは突然に
ナノハナの町をぶらぶら歩きながらユナはエースに言われた事を思い出していた。
それは少し前に遡る、この町に来る前のドラム王国でエースが”弟のルフィ”に伝言を残して行ったのだ。それで今この国にいるかも知れないルフィを探しに二人は立ち寄った…会った事は無いが手配書で顔は知っている。
あくまでルフィはついでで本来の探し人は別にいるのだが、ルフィの事を話すエースは本当に楽しそうに話すのをユナは知っている。だからついでじゃなく何ならそっちを優先させたい気持ちだった、大切な人に会えるのは本当に嬉しい事だから。
そんな事を考えながら注意深く歩いていると不意に”正義”の文字が目に入った。葉巻を二本咥えた人相の悪い白髪の男と眼鏡を掛けたショートの女、男の背中には間違いなく正義の文字が入ったコートが靡いていた。
『海軍もいるのか…エース問題起こさないといいけど』
手配書が無い自分は兎も角手配書に載ってるエースは海軍に見つかればただでは済まない、”ポートガス・D・エース”またの名を”火拳のエース”…火拳はエースの通り名だ、炎を自在に操り闘う姿はまさに拳武。
エースの無事を祈りながらユナは出来るだけ自然に行き交う人々に紛れその場を離れる。
その姿を海軍に見られているとは知らずに…。
「どうかしましたかスモーカーさん?」
眼鏡が似合う黒髪ショートの女が声を掛けた、スモーカーと呼ばれた白髪の男は少し先を訝しげに見つめて眉を寄せている。
「…いや、なんでもねぇ」
一瞬しか感じなかったが視線を感じた気がした、すぐさま視線の先を見たがそこに居たのは踵を返す一人の少女だった。
見た目は18くらいの栗色の髪をした何処にでも居そうな普通の少女、いつもなら気にも留めないだろうがただ雰囲気だけが凄く大人びていて何故か気になったのだ。
だが今はそれどころでは無い”麦わらのルフィ”が近くにいるかも知れないのだ、今自分のやるべき事は麦わらのルフィを取っ捕まえる事だ他の事に気を取られてる暇はない、そう考えるとスモーカーは頭を一つ振り踵を返す。
「行くぞ、たしぎ」
「…え、あ、はい!」
たしぎと呼ばれた女は眼鏡を掛け直すとスモーカーの後に続いて二人はその場を後にした。