第2章 別れは突然に
見渡す限り一面の青い世界を今、私達は颯爽と駆け巡っている。
肌にかかる水飛沫を気にも止めずにある目的の為に──。
『ねぇーエース、次はどこ行くのー?』
「んー?次はアラバスタってとこだ」
頭に被ったオレンジ色のテンガロンハットが風で飛ばされないように手で押さえながらエースと呼ばれた男は答えた。
定員二人がギリギリの小型船、名はストライカーに私はエースの背中にしがみ付いて乗っている、原動力はエースのメラメラの実の能力。足下後方から炎を吹き出して進んでいる、あまりの速さに気を抜けばすぐに飛ばされそうだった。
『アラバスタかぁ…』
「ん?なんだアラバスタは行ったことあんのか?」
『んー、昔に…行ったことあるかな』
その答えにエースは肩越しに背後をちらりと見る。自分の肩より低い少女が背中にしがみ付いている為顔は見えないがその声音はどこか昔を懐かしんでいるようだった。
見た目が17くらいの少女が昔と言えば高が知れてる、他人が見ればそう思うだろう、だが人は見かけによらぬもの特に”この海”では物事を自分の物差しで計ってはならない。
それはこの海で生きる者なら誰もが知っている暗黙の了解。
「そうか」とエースはそれ以上追求することもなく特に気にも止めずに再び目線を前に戻した…それから暫く進んでいると前方に町が見えてきた。
アラバスタ王国”港町ナノハナ”
二人は海岸にストライカーを停泊させるとナノハナに降り立った。
『うげ、この町匂いが凄いね』
開口一番に出た言葉がコレだ、昔は今ほど匂いがキツくなかった気がする。鼻を摘みたくなるほどでは無いが私には不得手な匂いだ。
「匂い?何か匂うか?」
エースは鼻をスンスンさせて匂いを嗅ぐと「確かにちょいと匂うなー」と特に気にしたふうもなくストライカーを海岸に固定する。
「さてと…ユナ、匂いが嫌ならここで待ってるか?」
『いや、私も行く』
間髪入れずに答えた少女に呆気に取られながらも予想通りの答えに思わず苦笑する。ぽんぽんといつもの癖で少女の頭を撫でるとユナと呼ばれた少女は嬉しそうに頬を緩ます、それを見たエースも嬉しそうにニカッと笑う。
「じゃ、いつもどーり二手に別れて探すぞ。あと例の件も忘れンなよ」
『アイアイサー』
その言葉を最後にいつもと変わらぬ調子で二人はナノハナに姿を消して行った。
