第5章 ワニの家
「ユナ!カジノで待ってるから!」
「後で必ず来いよ!」
返事の代わりに一つ頷く。走り去る二人に迫ろうとする敵を再び風で吹き飛ばしながらユナはワザとらしく一つ息をついた。
『…ハァ、あなた達の相手は私よ、余所見しないでくれる?』
明らかに神経を逆撫でするその言い方と態度に敵はターゲットをナミとウソップからユナに変える。
「舐めやがってこのガキ…」
「お嬢ちゃんに大人を怒らせるとどーなるか教えてやらねェとな」
「…へへ、謝るなら今の内だぜ嬢ちゃん」
目の前にいるのは何処にでもいそうな普通の少女、例え能力者だとしてもこの人数で掛かればどうって事は無いだろう。どっからどう見ても優位な状況に男達は余裕の笑みを見せる。
が、一瞬にして全員の顔が強張った、まるで蛇に睨まれた蛙のように。その原因は目の前にいる一人の少女だ、さっきまでの雰囲気とは打って変わって目が据わりその眼光は人ひとり簡単に殺してしまいそうな程鋭かった。
『…ひとつ、あなた達に教えてあげる』
何処までも冷たい声音に男達は戦慄を覚える、冷や汗が止まらない。
『人は見かけで判断しないこと…でないと』
「う、うるせー‼︎ごちゃごちゃ言ってんじゃねェよ‼︎」
何とも言えない恐怖心を拭うべく一人の男が啖呵を切った、それを筆頭に他の男達も続きユナに襲い掛かる。
先頭の男が振り下ろした剣を危なげなく避けるとユナは剣の柄と一緒に男の手を抑え込んで投げ飛ばす、投げ飛ばされた男は仲間を巻き込んで倒れていった。