第4章 真にやるべき事は
──あった。
まだ成長途中の雨雲がアラバスタの遥か遠くに存在した、自然に降るのを待つのが一番いいのだがもう待てるだけの時間が無いのは今までの旅で感じていた。
だから少しだけ、ほんの少しだけ手を貸そう、自然に影響が出ないように。
『…オウラノエナーネモ(天つ風)』
ユナの口から紡がれた言葉に呼応するように柔らかな風が頬を撫で、天へと翔けていく。自分が出来るのはココまでだ、あとは自然に任すしかない…ふぅと息を吐くとユナは再びルフィたちの様子を伺った、どうやらルフィは体力の限界がきて寝てしまったようだ、それをトトおじさんが宿まで運んでいる。
ユナも明日のために宿屋へと踵を返すのだった。
その夜”夢の町レインベース”のとあるカジノではB・Wのボスクロコダイルとその部下オフィサーエージェント6人が集まっていた。
「作戦名”ユートピア”──これが我々B・W社の最終作戦だ」
不気味な笑みが溢れる。他のエージェント達とは纏う雰囲気がどこか違う黒髪のショートの女がそれぞれの任務を記した紙を配る。
各自が任務を確認するとテーブル中央にある蝋燭へと紙を近付けた、赤い炎を灯して紙が燃えていく。
エージェント達が任務を全うした時アラバスタ王国は大破し、行き場を無くした反乱軍と国民達はB・W社にすがるだろう。
「一夜にしてこの国はまさに…我等の”理想郷”になるわけだ‼︎」
「…B・W社最後にして最大の”ユートピア作戦”失敗は許されん、決行は明朝7時‼︎」
「「「了解」」」
「武運を祈る」
シワを一層深くして怪しく笑うクロコダイルとエージェント達…それを黒髪のショートの女が感情の読めない瞳で眺めていた──。