第25章 過去からのメッセージ
誰もいない甲板にユナは一人佇んでいた。
”──あいつを信じろ”
ロジャーの言葉が私の中で木霊する。
そんなの信じてるに決まってる、レイリーなら大丈夫だって。
けど…それと同じくらい”失うかもしれない”と言う恐怖が私を支配する。
大切な仲間が目の前でいなくなるのは嫌だ、救える術があるのに救えないのは嫌だ。
脳裏に焼き付いた昔の光景がチラつく、次々にいなくなっていく、仲間の姿が。
──瞬間、ざわりと風が騒いだ。
嫌だ嫌だ嫌だ─────怖い。
もうロジャーの許可なんて取らずに力を使ってしまおうか、誰だって怪我を治して貰って悪い気はしないはず──
──それがあいつの意に反してたらどうなんだ。
──それはあいつの為じゃねェ、お前のエゴだ。
ロジャーの言葉が心に突き刺さる。
『………はは…ロジャーは容赦無いなぁ…』
核心を突く言葉にユナは空を仰ぎ顔を歪ませた。気付いてなかった訳じゃない、ただ気付かない振りをしていた…相手が望まなくても私が嫌だったから、一緒にいたかったから。
だから私は私の完全な自己満足で力を使おうとしていた…”昔と同じ”ように。
『───……』
一度大きく深呼吸をし、何かを決意したユナは身に付けていた武器を徐に手に取った。
『…短い間だったけど今迄ありがとね』
──船長命令を破り、仲間を信じられない自分はこの船に居るべきじゃない。
寂しそうな表情のユナは、名残惜しそうに愛用の武器を甲板にコトリと置いた。
船先まで歩き音も無く舞い上がると、ユナは船を一瞥した──そしてそのまま二度と振り返る事なく空へと消えて行ったのだった。
──……
あれがロジャー達と話した最後だった、だからレイリーが無事だったのか今も分からない。
結局私は”裏切った”のだ、私を救ってくれたロジャーを…仲間を信じられなくて、自分が傷付きたくなくて逃げたのだ。