第25章 過去からのメッセージ
ロビンと空の騎士がその後も何やら話しているがユナの耳には入ってこない。
ロジャーと聞いた瞬間自分の足が竦んだのが分かった、その場から動けない足に反して心臓は静かに早鐘を打つ。
「…おいアンタ、そこにも何か彫ってあるぞ…!」
ゲリラの一人が土台の隅を指差す。言われたロビンは徐にその文字を読み始めた。
「……”もう機嫌は直ったか? また一緒に世界を見て回ろうぜ”」
『──っ!』
「これは…ロジャーが誰かへ宛てたメッセージ……?」
「こんなとこに態々、一体誰に宛てたメッセージなんだ…?」
「さァそこまでは…書かれていないわ」
考え込むロビンを余所にユナは堪らずその場を離れ駆け出した。その足音にロビンが振り向けば、オレンジ色の帽子が森へ消えて行くのが垣間見えた。
「風使いさん…?」
来た道を戻り草木が生い茂る森をユナはただひた走る。
風を切るように、飛び出た枝も葉も御構い無しに道無き道をただがむしゃらに走った。
『…っは…はぁ……っ、はぁ…っ』
息が上手く出来ない。全力で走ってるせいかロジャーの言葉を聞いたせいか、ドクンドクンと心臓が痛い程に脈を打つ。
『はぁ…はぁ──っ!』
何度も何度も転びそうになりながらも必死に走り続けた。だが、目の前が一瞬真っ暗になりユナの足はそこで漸く止まる。木の幹に手をつき身体を支えながら荒い呼吸を繰り返す。
そう言えば貧血気味って言われてたっけ…脳に血液の循環が追い付かず、遠のきそうになる意識を必死に繋ぎ止める。肩で息をし酸素を取り入れながらユナはその場にズルズルと崩折れた。
なんで……どうして……っ
顔を歪ませながら俯くユナにロビンの言葉が蘇る。
”──もう機嫌は直ったか?”
そんなのとっくに直ってる…っ
”また一緒に世界を見て回ろうぜ──”
無理よ……あなたがいなきゃ出来ないじゃない……”ロジャー”……っ!
ロビンが読み上げた言葉を聞いた瞬間、一陣の風が知らせてくれた…あれはロジャーが私に宛てたメッセージだと。
ロジャーは──私が初めて乗った海賊船の船長だった。ロジャーと一緒に海へ出たのが私にとっての”初めての航海”だった──。