第25章 過去からのメッセージ
今まで見たことも無い程の大きな黄金の鐘。
『あれが大鐘楼…』
エネルの船にあった巨大な黄金よりも更にでかい大鐘楼の周りにはスカイピアの人々とゲリラの人々、それに空の騎士とロビンの姿があった。
「”真意を心に口を閉ざせ”」
「”我らは歴史を紡ぐ者”」
──!
大鐘楼に近付いたユナはロビンの言葉に耳を疑った。
──……
”──真意を心に口を閉ざせ…よいか、どんな真実を知っても決して干渉してはならんぞ……わしらは──”
シワシワの手が小さな女の子の頭を優しく撫でながら言い聞かせる。
”どうして? どうしてダメなの?”
頭を撫でられていた女の子はこてんと首を傾げて大きな瞳で老爺を見つめた。真っ直ぐに見つめてくる女の子の純粋な瞳が眩しくて、老爺はついと空を見上げる。
いつかこの子が世界を知った時、今みたいに真っ直ぐな瞳を忘れずにいられるだろうか。
雲一つない青空は何処までも飛び立って行けそうな程清々しいのに、老爺の心はもうずっと曇天だった。
”いつか、いつか分かるじゃろ……じゃが知らない方が幸せなのかものォ…”
風で女の子の栗色の髪が靡く──空に呟く老爺の声は風に掻き消されそうな程の小さな声だったが、間違いなく女の子の耳へと届いていた。
──……
昔、一度だけ言われた言葉。
あの後何回聞き返しても結局”じじ様”は答えてくれなかったな…今でもじじ様の言葉の真意は分からないがどうして同じ言葉が”空島”にあるのか。
感傷に浸っていたユナはゆっくりと深呼吸をすると再びロビン達の方へと歩き出した。
だが直ぐにその足は止まる事となる。
「我ここに至りこの文を最果てへと導く──海賊、”ゴール・D・ロジャー”」
『…‼︎』
「海賊王…⁉︎ まさかこの空島に⁉︎ なぜこの文字を扱えるの…⁉︎」
大鐘楼の土台に彫られていた”古代文字”を読んでいたロビンは驚きの声を上げた。
「……ロジャーと書いてあるのか?」
「知ってるの?」
ロジャーという単語に空の騎士が反応する。
20年以上前に”ロジャーと言う青海の海賊”がこの空島に来たと言う。
どうやって大鐘楼に辿り着いたかは定かでは無いが、動かぬ確かな証拠が大鐘楼には刻まれていた。