第23章 終焉を告ぐ島の歌声と堕ちる陰
『ルフィ…!』
「離すつもりはねェ! ユナには最後にあいつの舟まで連れてって貰うからな、それまではおれが連れてく!」
『…っ』
ナミも言っていたがルフィは一度言い出したら聞かない、離してくれないのなら別の方法を使うまでだ。
『だったら風で飛ばすわよ!』
「…! あァ、思いっ切り頼む!」
ルフィに後ろ前に担がれているユナは片手を前に突き出した。
『オウリアーネモ(追風)!』
ユナの声に呼応して風が勢いよく二人を後押しして行く。
「うお…はえェェ!」
風に乗り勢いを増したルフィはどんどんジャイアントジャックを登って行った。
「やれやれせっかちな者共だな……なぜ”雷迎”の完成を待てない」
舟からルフィ達を見下すエネルは手を翳した。
「──仕方ないここへ近付けぬ様に…アッパーヤードを少々砕いておくか…」
「”ママラガン(万雷)”」
エネルの言葉でアッパーヤードに数多の雷が撃ち落とされる。
「うおっ!」
『うわァ』
先程よりも雷撃が激しくなる、エネルは雷でジャイアントジャックの根元を沈めるつもりなのか。
集中砲火されたアッパーヤードは地響きと共にあちこちで煙が上がった……だが──
大地は沈まなかった。
島雲ならひとたまりも無いだろうがこれくらいの雷では大地はビクともしない。
それを見たエネルは舌打ちをする。
「ならば”雷迎”を落とすまでだ…この国にもう用は無い」
エネルは再び手を空へと翳す、上空に出来た黒く巨大な雷雲の塊を今度は落とす為に。
「…! ユナ!」
『任せて!』
ジャイアントジャックの頂上付近に差し掛かった時、足元が揺れ始めた。ジャイアントジャックが傾き始めたのだ。
どうやらナミ達も上手くいったようだ。
このチャンスは無駄にはしない、エネルの舟も目と鼻の先にある。
ルフィはユナを肩から降ろした。
「おれはこのまま突っ走るから後は風で飛ばしてくれ」
『了解』
ユナをその場にルフィは再び走り出す、残されたユナは静かに深呼吸した。