第21章 決死のダイブ
正直まともに戦っても勝算なんてこれっぽっちもない、肩の傷も神経をやられたのか左腕が動かなかった。
それでもここでやられる訳にはいかない、せめてナミを無事に逃すまでは足止めしなくては。
能力を使えば勝算はあるだろうが、さっきの反動がまだ残ってる状態では流石にキツイ。それにエースとの約束もあるのだ…既に破ってしまっているがそれは黙っておくとして。
さてどうする──。
ユナはチラリと横目でナミを見た。
『ナミ、策は?』
「…ウェイバーがあるからそれで脱出して”島雲”の部分に着地出来れば何とか……」
『分かった、私がエネルの気を引くからその隙にナミは逃げて』
「…な、あんたはどーすんのよ!」
ユナを助ける為に来たのにそれでは本末転倒だ。
心配するナミを余所にユナはふわりと笑う。
『私は大丈夫、ナミが飛び降りたら隙を突いて私も飛び降りるわ…だからもう少し帽子よろしくね』
ナミが手にしている帽子をチラリと見ると言い終わるが早いかユナは駆け出した。後ろでナミが声を上げるが聞こえないフリだ、ユナはエネルに向けて風の刃を放つ。
だがそれはエネルを通り抜けるだけに終わる。
『ナミ早く!』
「…っ」
「何をするつもりか知らんが逃しはせんぞ──」
『ティエラ(疾風)!』
「…っ」
走り出したナミにエネルの手が伸びる前にユナは目眩しに突風を吹き荒らす。腕を翳しながら小賢しいとエネルはユナ目掛けて雷を飛ばした。
「…ユナ!」
『大丈夫!』
ユナは横に飛び退いてそれを避けると風の刃を数発放つ。
いい加減に飽きたと自身を裂くだけの無意味な攻撃にエネルは真っ向から突っ込んで一瞬の内でユナの眼前に迫る。
「さてどうする? ここには木の棒は落ちてはないぞ?」
ニタリと笑いエネルは手にしていた槍でユナを払い退けた。
『…っ』
咄嗟に右腕で防ぐがユナの体はそのまま飛ばされ中央の黄金へと激突した。