第20章 天敵
暫く歩くとやがて巨大な舟が見えてきた、あまりの大きさの舟にナミは言葉を失う。舟の大きさだけではない、舟の中央には巨大な黄金が鎮座していたのだ…ナミの様子にエネルはヤハハと口を開く。
「驚くのも無理はない、この舟は私のみが操れる唯一の舟”方舟マクシム”…動力を”雷”とする」
エネルギーは有り余っているがそれを必要量機械的に伝達できる物質が欲しかったのだとエネルは言う…それがこの島に眠っていた”黄金”。エネルはその黄金を使い”空飛ぶ舟”を創り上げたのだ。
ナミは人知れず拳を握った。空飛ぶ舟…本当に空なんて飛ばれたらユナを助けるどころか逃げるタイミングさえ失ってしまう…‼︎
どうする──マクシムに乗り込みながらもナミは必死に思考を巡らす、ユナは今だにエネルに抱えられたままだ何か策は無いか、エネルの意表を突ける何か…。
ナミが考えに耽っていると舟の中央に備え付けられた玉座を前にエネルの足がピタリと止まった。
「…やはり生き残った5人の誰でもないな様だ…」
「え…?」
「──実に不愉快…私の予言は外れだったというわけか」
次第に不機嫌になるエネルは踵を返すと船縁へと近付いた。そして現れた人物を見下ろす。
「お前かァ‼︎ エネルって奴はァ‼︎」
「え⁉︎ ルフィ‼︎」
思いもしなかった仲間の声にナミも直ぐさま船縁から身を乗り出す、そこに居たのは紛れもなくルフィだった。ルフィの登場にナミは人知れず安堵する。
「何やってんだお前…おれの仲間によ」
エネルを睨み付けるルフィの瞳には怒りが宿っていた、きっとエネルにやられたゾロ達に会ったのだろう…みんなは無事だろうか。
相変わらず人を見下した態度のエネルは若干の苛立ちを見せながら口を開く。
「どのゴミの事かな、口を慎めよ…私は神だ」
「お前のどこが神なんだ‼︎」
言うが早いかルフィはそう叫ぶとエネルに向かって駆け出した、腕を伸ばし船縁を掴むと一気に距離を縮める。それを見たエネルはフンと鼻を鳴らした。
「超人系か話にならん、私の前では何もかもが無力っ…故に私は神なのだ! ”エル・トール(神の裁き)”‼︎」
「ルフィ…‼︎」
凄まじい雷がエネルの掌から放出される、それは一直線にルフィに向かって行った。