第19章 キミとの約束(後編)
「あ、あの時はあーするしかなかったろ! オレが助けなきゃお前がヤられてたんだぞ⁉︎」
『その方が良かった!』
「なっ…、良くねェよ!」
『良かった!』
「良くねェ!」
『良か──っ!』
「‼︎ ユナ!」
突然足の力が抜けその場に倒れそうになったユナをエースが慌てて支える。少し無理が祟ったのか、ユナの身体はユナの意に反して言う事を聞かなかった。
「大丈夫かよ⁉︎」
『えぇ…大丈夫、ありが──って、エース⁉︎』
「暴れるな、落ちるだろ」
『いや大丈夫だから降ろして…!』
「うるさい、黙って運ばれろ…この意地っ張り」
『〜〜〜っ』
エースはユナの背中と膝裏に腕を通すと軽々抱え上げた、所謂お姫様抱っこと言うやつだ。
半分本気で怒っているエースにユナは渋々大人しくなる、何だかつい最近もマルコと似た様なやり取りをした気がするなぁ…若干の既視感を覚えながらユナは仕方なくエースに身を委ねた。
『…ねぇエース』
「…何だ?」
医務室に向かうエースにユナはポツリと呟く。ユナが大人しく運ばれているのでエースの機嫌はどうやら直ったようだ。
『さっきの約束…守ってよね』
「………」
『守ってよね』
「………」
『エ〜ス〜』
返事のしないエースをユナはジト目で睨む。
『………』
「………」
『………』
「………」
『……エース』
「〜〜〜っ、努力する」
『…はぁ、仕方ないから今回はそれで勘弁してあげるわ』
「何を偉そうに…」
『ふふ、これでおあいこでしょ』
徒らに笑うユナにエースは肩を竦めて笑った──約束とは言い難いこの約束が二人が初めて交わした約束だった。