第19章 キミとの約束(後編)
「もしかしてユナを戦闘に参加させない理由って…」
「あァ…そうだ」
間違っても敵を殺させない為、仲間の為なら自分の事は犠牲にするユナの性格を考えればそうするのが一番だった。
それに手配書に載らないようにと言うのもあながち嘘ではない。ユナの能力が海軍に知れ渡ればユナを捕まえようと海軍はどんな手でも使って来るだろう…本人にその気がなくとも世界を引っくり返しかねない能力なのだから。
最もそんな事をすればユナの命がないのは目に見えている。
「こいつも自分の力の危険性は分かってるハズだァ…だからカゼカゼの実を食ったと嘘を吐き、風しか操ってねェ……そう思ってたがァ…」
「…違ったのか?」
「あァ理由は分からねェがどーやら風以外を簡単には操れねェみてェだ…」
本人に聞いても言わねェだろォからこれは推測だが──恐らくこいつは理に反して能力を使った…だからその反動で風以外を操れねェ様になったと考えてる。
それと悪魔の実の能力者同様、こいつにも弱点があってなァ…”無機質”の物はこいつにとっては”毒”でしかねェんだ…しかも人工的に造られた物ならそれは尚更だ。だから偵察でこの街が金属の加工技術に特化した街だと分かった時、万が一にもユナに危害が及ばないようマルコに後を追わせたってわけだ──。
───……
夜風が吹く中、エースは一人甲板から海を眺めていた。
あの時ユナが苦しそうにしてたのは海楼石の所為では無く、特殊技術で造られた手枷の所為だったのか…白ひげの話を聞いてエースは全てに合点がいった。
あの事件から丸ニ日、ユナは未だに眠ったままだ…エースは無意識に銃で撃たれた場所に触れる。見た目では分からないが手で触れれば微かに分かる程度には傷痕は残っていた。
「これも…ユナの能力か…」
医務室で気が付いた時には既に傷は殆ど治っていた、確かに銃で撃たれたハズなのに…。その事を親父に言えばそれもユナがやったのだろうと言った、相手の自然治癒力を増幅させて傷を癒したのだろうと。