第19章 キミとの約束(後編)
薄暗い中でも分かるくらいに白く血の気の引いたユナの寝顔は、まるで死んでるんじゃないかと思う程に時が止まって見えた。
微かに上下する布団と心音を伝える機械が辛うじてユナが生きている事を証明してくれる。
「──こいつァは元々は違う船に乗ってたんだ…」
「…あァユナは”居候”だって前に聞いた」
「…居候か……やっぱりこいつはオレの船に乗るつもりはねェみてェだな」
「……どーいう意味だよ親父」
眉を寄せるエースに白ひげは徐に振り向く。
「こいつはこの先も誰かの船に”仲間”として乗る事はねェだろ…」
此方がいくら仲間として招き入れてもユナ自身が居候と思っている限り、それは本当の意味での仲間とは言えない。
「…もしこの先誰かの船に乗る事があるなら…それはエース、おめェの船だろォ」
「……⁉︎ 何言ってんだよ親父っ…オレはこの船を降りるつもりは──」
「あァ分かってるさ…例えばの話だァ…それほどこいつがおめェに一番懐いてるってこったァ」
長い付き合いのこの船の誰よりも、数ヶ月前に出逢ったエースに一番心を開いている…それは誰が見ても一目瞭然な程に。
「……ユナは何でこの船に…」
ユナがモビー・ディック号に乗った経緯に興味はなかったし知ろうとも思わなかったが、ここまで言われたら気になってしまう。
エースの質問に白ひげは窓の外を眺めながら語り出した。
ユナの乗っていた海賊船は20年も前に解散し、船長は処刑された。その船の船長と知り合いだった白ひげは偶然出逢った当時のユナを放って置けず、自らの船へと招き入れたそうだ。
「まァ簡単に言うとそんなとこだァ」
「…そう…だったのか…」
ユナにとっての仲間はその船長の船なのだ…だからこれから先も他の船に乗る事はない、そう思っていた…エースが現れるまでは。