第19章 キミとの約束(後編)
『……消えて』
「…っ⁉︎ ……がはっ…‼︎」
風の刃をもろに食らったブーゲンは成す術なく飛ばされ壁へと激突した、鉄製の壁が大きく歪む。
「がっ……‼︎」
容赦無く叩き付ける風は弱まる事を知らず寧ろ益々強くなり、身動きのとれないブーゲンは風圧で次第に息が出来なくなっていく。
このままでは死──
そんな考えが頭を過ぎるがどうする事も出来ないブーゲンは近付く死に最早怯えるしかない。
イヤだイヤだイヤだイヤだ──死にたく無い──っ
「……っユナ…もういい……やめろ…!」
一部始終を見ていたエースが呟くが吹き荒れる風の中その声がユナに届く事はない。
殺しもしてきた自分だが出来ればユナには殺しをして欲しくないと思うのはエゴだろうか。声を張り上げようにも血を流し過ぎて目の前が霞んできた。
ユナ──……
エースの意識が薄れそうになったその時、聞き覚えのある声が響いた。
「ユナ‼︎ やめるよい‼︎」
倉庫内に響き渡るその声にユナは徐に振り向き、エースはその人物を見て安堵の息を吐く。
『…マル…コ…何でここに…』
突然現れた人物にユナは気が抜けたのか吹き荒れてた風はピタリと止んだ。入り口にいたのはパイナップルみたいな髪型が特徴的な男、仲間のマルコだった。
風が止んだ事により壁に貼り付けられていたブーゲンは支えを失いその場に倒れた、それを見たマルコは一目散にブーゲンに駆け寄る。
仲間よりも先に敵に駆け寄るマルコの行動をエースは不審に思うが、もう瞼を開けてるだけの気力はなくエースは遂に意識を手放した。
『…そうだ…エース…っ!』
我に返ったユナはマルコの行動には目もくれず、急いでエースに駆け寄った。呼び掛けても返事の無いエースにユナは心臓を握り潰される思いだった。
ユナはぐっと意を決するとエースの体に額を押し当て、祈るように瞳を閉じた。
エース────……
ドクン
思い出したように酷くなる頭痛と気持ち悪さ、不自然に脈打つ心臓を必死に追いやりユナは意識を集中する──。
───……